手探りでの土づくり、終わりの見えない草抜きを経て2013年の10月、初めて遠州小落花を収穫したときのことを、杉山さんはこう振り返る。
「そのときはトラクターもなかったから友達を呼んで鍬で収穫したんだけど、手に取ってみたらすごく重く感じたよね。食べてみたら、ピーナッツバターにするのもったいないくらい美味しくて。これだ! と思ったな」
収穫した遠州小落花をフライパンやストーブで炒ってから、アメリカで購入した本格的なマシンでピーナツバターを作ってみた。
ちなみに、杉山さんの商品は「ピーナッツバター」という名前がついているがそれは便宜上で、実は100%ピュアなピーナッツのぺーストだ。バターはもちろん、油も砂糖も塩も加えていない。無農薬、無添加で作った世界一の豆のうま味を感じてほしいからだ。
最初に作った“ピーナッツバター”をレストランのシェフやお菓子屋のパティシエに食べてもらうと、通常の“ピーナッツバター”とは全く違う味に戸惑い、「全然甘くない」「どうやって食べるの?」という声があがった。
しかし、不安はなかった。最高の豆さえあれば、あとは工夫して改善すればいい。そこから試行錯誤が始まり、浅炒り、深炒りで味が変わるコーヒーと同じく焙煎の具合と、脂分が異なる豆の大小を組み合わせて絶妙な甘みを生み出すことに成功した。

川内イオ