未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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幻の落花生をピーナッツバターに!

NutsによるNutsのための物語

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.93 |25 June 2017
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#8全然甘くない“ピーナッツバター”

ピーナッツバターにした後の殻も農地に撒いて肥料に

 手探りでの土づくり、終わりの見えない草抜きを経て2013年の10月、初めて遠州小落花を収穫したときのことを、杉山さんはこう振り返る。

「そのときはトラクターもなかったから友達を呼んで鍬で収穫したんだけど、手に取ってみたらすごく重く感じたよね。食べてみたら、ピーナッツバターにするのもったいないくらい美味しくて。これだ! と思ったな」

 収穫した遠州小落花をフライパンやストーブで炒ってから、アメリカで購入した本格的なマシンでピーナツバターを作ってみた。
 ちなみに、杉山さんの商品は「ピーナッツバター」という名前がついているがそれは便宜上で、実は100%ピュアなピーナッツのぺーストだ。バターはもちろん、油も砂糖も塩も加えていない。無農薬、無添加で作った世界一の豆のうま味を感じてほしいからだ。

 最初に作った“ピーナッツバター”をレストランのシェフやお菓子屋のパティシエに食べてもらうと、通常の“ピーナッツバター”とは全く違う味に戸惑い、「全然甘くない」「どうやって食べるの?」という声があがった。

 しかし、不安はなかった。最高の豆さえあれば、あとは工夫して改善すればいい。そこから試行錯誤が始まり、浅炒り、深炒りで味が変わるコーヒーと同じく焙煎の具合と、脂分が異なる豆の大小を組み合わせて絶妙な甘みを生み出すことに成功した。

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未知の細道 No.93

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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