
夕方、さらに東に向かってクルマを走らせた。昼間たっぷりと遊んでいるだけあり、娘は夕方になると決まって昼寝をした。その間に、とにかく距離を稼いでおきたい。
それにしても、どこで寝るのかが決まっていない毎日は、なかなかスリリングだった。温泉を見つけては入り、夜ご飯を食べながら、どこのキャンプ場に行くかを考えるのだ。
時折、知床まであとどれくらいなんだろうとスマホで検索し、その度に愕然とした。私たちは確実にゴールに近づいてはいたが、一般道で進んでいるのでまだまだ遠かった。何よりキツイのは、走っても、走っても似たような景色が続き、前に進んでいる感じがしないこと。
「“北海道はでっかいどう”って聞くけど、本当だね!」と夫に声をかけた。
北の大地の雄大さにおののいていると、徐々に空が赤く染まり始めた。
「わあ、夕焼け!綺麗だよー」
「ちょっと降りてみよう」
私たちは道端に車を寄せ、静かに変わりゆく夕刻の空を眺めた。空全体が藍色から紅色までの見事なグラデーションを作り上げていく。
そうこうするうちに、夕暮れの中に湖が見えてきた。
山をバックに抱いた広大な湖を前にして、ずいぶん遠くまで来たなあという感慨が広がった。それは、日本最大のカルデラ湖、屈斜路湖だった。