未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
163

『旅の思い出』編 北の大地をロードムービーのように 親子三人、キャンピングカーで旅をした

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.163 |10 June 2020
この記事をはじめから読む

#8最後のプレゼントは

そうして、最後の二日間で、摩周湖や阿寒湖、士幌高原をぐるりとめぐり、再び旭川に戻った。道東から戻ると、ビルが立ち並ぶ旭川はものすごい大都会に見えた。

道東は、ガイドブックや想像をはるかに超えてすばらしいところだった。夏の終わりに吹く風は爽やかで、空はどこまでも高く、森は瑞々しく輝いている。ファミリーレストランもショッピングモールもなく、ただ静かな草原の合間に牧場や森、小さな町が現れ、私たちはただひたすら広い大地をドライブし、動物に出会い、景色のページをめくり続けた。
キャンピングカーの旅は、やはり自由だった。ロードムービーさながらに、道端で見かけた場所に惹かれるままに立ち寄り、思いがけない出会いを楽しんだ。
もちろん、ちゃんとした計画もなく、一から十まで自分たちで決断するわけだから、ときに失敗してしまうこともある。しかし、だからこそ私たちは、自由な旅だけが持つ魔法に触れることができるのだ。

そうだ、旅の最終日には、旅の神様から素晴らしいプレゼントもあった。
士幌高原のキャンプ場の奥に広がる森で、野生の鹿の親子と出会ったのだ。鹿の親子は小川で水を飲んでいた。
私たちは、ただそれを長いこと見ていた。

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。