未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
163

『旅の思い出』編 北の大地をロードムービーのように 親子三人、キャンピングカーで旅をした

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.163 |10 June 2020
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#7原始の川をカヌーから眺める

その一方で、私たちは悩んでいた。
すでに旅が後半に突入したわけだが、私たちはまだ知床の手前にいた。そして、頑張って前進し続けることにちょっと疲れてしまった。それよりも、いまは目の前にある風景をただゆっくり、のびのびと堪能したかった。
「もう、ここら辺まででいいよね」
「知床はいつかいこう」
「うん」
そう決めると一気に気楽になり、屈斜路川の流れをカヌーで下るツアーに参加することにした。
川の流れはとてもゆるやかで、初心者でも自力で漕ぎながら川の旅を楽しめるとのことだった。

屈斜路川は、屈斜路湖から流れ出る唯一の川で、十勝平野や森の中を蛇行しながら釧路湿原に出て、最後は太平洋に注がれる。全長154キロの長い川の割に、ダムが一つもないないというのは日本ではかなり珍しく、本来の「川」そのものがもつ原初の風景が見られるそうだ。

カヌーに乗り込むと、私たちはそのあまりの透明さと静けさに驚いた。木々に囲まれた川は青緑色に輝き、川底に沈む石や倒木までくっきりと見える。
すごい…。パドルを漕ぎながら何度もため息をついた。
聞こえてくる音は、川のせせらぎばかりで、時おり小さな鳥が頭上を横切り、ケーンという鳴き声が辺りにこだました。
旅の目的地である知床半島は見られなかった。
しかし、今日ここでゆっくりできて三人とも幸せだった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。