
その晩は、富良野の「星に手のとどく丘キャンプ場」で一夜を過ごした。丘の上に広がる草地が気持ち良く、頭上いっぱいに空が広がっている。
そして、このキャンプ場には、思いがけない副産物があった。ウサギと羊だ。
「おー、やったねー!」とナナオに声をかけた。
実はこの北海道の旅には、もうひとつのテーマがあった。動物が好きな娘に色々な動物を見せてあげたい、というものである。
ラッキーなことにこのキャンプ場では、たくさんのウサギと羊を飼っていた。ナナオは喜んでウサギに餌をあげにいき、指を噛まれながらも、ウサギ小屋から離れようとしなかった。
その夜は、初めてキャンピングカーで眠った。クルマのドアを閉めればホテルになる、というのはとても楽だ。
「ここで寝るんだよ!」
と運転席の上に設えられたベッドスペースを娘に見せると、「えええ、すごい」と驚いていた。穴蔵のようで眠るには快適そうだ。本を開いて横になると、すぐに眠りに落ちた。
真夜中には、トイレに起きた友人の「わあ、すごい星!」という声が聞こえたが、疲れていたのか起き上がることはできなかった。
朝の時間は、ことさら最高だった。
霧が立ち込める幻想的な景色の中、たくさんの羊が放牧されている。のんびりと草を食む羊たちを眺めながら、私たちは前日に買っておいたベーグルを温め、紅茶を入れ、朝食を食べた。すばらしい1日のスタートだ。
ちなみに知床までは往復約500キロ。
本気でゴール・知床を目指すとなると、毎日100キロくらい進まないといけないはずだったが、まだ50キロしか進んでいなかった。