
初取材からこれまで、3冊の『ミナミソウマガジン』と、野馬追の写真集でもある別冊『相馬野馬追 ある家族の記録』を制作してきた。南相馬の「過去」を知らなかった私にとって、「いま」を知ることは同時に過去に想いをはせることでもある。


1号目の「南相馬≒『馬のまち』なのはなぜ?」に続いて、2号の特集は「南相馬に寄せるグッドウェーブ『サーフィンのまち』魅力解剖!!」だった。ローカルサーファー、ビジターサーファーそれぞれの視点で、サーフスポットとしての南相馬の魅力を知ることができた。「室原サーフボード製作所(M.P.S)」でサーフボードをつくるところを見学したら、工芸品をつくる手さばきで行う仕上げの華麗さにうっとりした。サーフィン教室も開く鈴木さんにお話を聞いて、サーフィンに挑戦したい気持ちも芽生えた。


3号目は『特集 祝10周年!南相馬市立中央図書館を訪ねて』。南相馬には、市民活動が実を結んだ、それはそれは素敵な図書館があるのだ。全国から視察が来る図書館で、フルタイムのスタッフ18名(2020年1月時点)は全て司書というプロフェッショナルが集結した場所。おもちゃの貸し出しもしていたり、中高生のたまり場になっていたり、文字通り老若男女が集う場所で、館内には500席もの椅子が用意されている。
光が降り注ぎ、明るい空気が満ちるこの場所だけれど、私はここを訪れる度に「震災と原発事故」と表札が出された部屋の前で息を飲んでしまう。東日本大震災や原発事故に関する本を収集しているというが、もう一部屋では収まらないほどになっているそうだ。
『ミナミソウマガジン』は、東日本大震災やそこからの復興を直接取り扱うものではなく、南相馬の風土や文化に向き合っている。それができるのは、苦しいこともちゃんと見つめて、東日本大震災の記録や記憶を集積している行政……図書館や、博物館のような場所があるからだと思う。
とはいえ、どんなに前向きで明るい『ミナミソウマガジン』だって、震災をなかったことになんてできない。文化や歴史そして「いま」にだって震災の痕跡はなんらかのかたちであらわれてくる。その「跡」と「いま」をどういう塩梅で取り扱うか、それが編集者の腕の見せどころでもあると思う。雑誌の体裁をとると、硬軟織り交ぜた視点を持てるからいい。