

「赤沼なのに赤くないよ」
と娘は言った。
むしろバスクリンを大量に放り込んだような見事な緑色をしている。
「いや、ほんとだね、なんで赤沼なんだろ?」と首を傾げた。
調べてみると、この沼には鉄分が多く、沼畔の植物が鉄錆色に染まることが「赤沼」という名前の由来とのことだった。
そもそもどうして色が異なるこたくさんの湖沼がここにできたのだろう?
この五色沼湖沼郡は、1888年(明治21年)に磐梯山が噴火したことで生まれた。この時の噴火は、溶岩がほとんど流れでない水蒸気爆発で、マグマで温められた地下水の水蒸気が、山の一部を大きく吹っ飛ばし、大崩壊を起こした。その結果として現れたのが、この大小30の湖沼だった。火山の影響で、多くの沼は酸性となり、その結果とても透明度が高くなった。沼の水にはアロフェンと呼ばれる鉱物質が大量に含まれていて、これが太陽光を反射することで独特の青色に見える。さらに、そこに個々の沼固有の生育植物の色がブレンドされたり、また深層地下水と混じり合うことにより、不思議なほどに異なる色味に見えるのだとか。
その後も私たちは、テクテクと歩き続けた。
見どころのひとつは「みどろ沼」だろう。赤色と青色、緑色と3色の絵の具が複雑に入り混じったような不思議な色の湖で、まさに「神秘の沼」の名にふさわしい。
まあ、せっかくなので本物の色はぜひ実際に訪れて確かめてみてほしいところである。