
28歳の時、岡田さんはある洋菓子と出会う。岡山の名店「モーツァルト」のパティシエ・大石圭佑さんがつくる「はしばみフィナンシェ」だ。
これを一口食べたとき、つーっと涙が出た。味はもちろん、パッケージまですべてが完璧だと思った。とくに、「はしばみ」という響きが心地いい。
「大石さん、はしばみってなんですか?」
「正式には『セイヨウハシバミ』といって、ヘーゼルナッツの和名だよ」
これがヘーゼルナッツとの初めての出会いだった。岡田さんの頭には、当時お世話になっていた元パティシエの先輩の言葉が浮かんだという。
「将来お菓子屋が、素材まで自分でつくるような時代がやってくるぞ」
しかしこの時、ヘーゼルナッツは南国で育つものと思い込んでいた岡田さんは、「雪国である長野で栽培するのは難しいだろう」という結論に達する。