
岡田さんは国内でヘーゼルナッツの苗木を販売していた4社から、計110本あったすべての苗木を買い占めた。
試験栽培を始めたのは、知人の紹介で見つけた遊休耕作地。畑の隣に農産物加工所を建てられる空き地があるのが決め手になった。
「その土地の農作物を、新鮮なままに加工して提供するのは6次産業の典型的なスタイル。『この畑で栽培したヘーゼルナッツでつくった商品です』とセットで見せることが、農作物と加工品、双方の価値を高められる方法です。そのため『ここでしか食べられない生アイス』をコンセプトに、全国から人を呼ぶ仕掛けにしようと思いました」
しかし、想定外の事態に見舞われる。店舗の建設が禁じられた土地であることが判明したのだ。長野市からは幾度となく諦めるよう言われ、協議は困難を極めた。
「この時期が一番つらかったかもしれません。協議中の1年間は収入がまったくなかったから、家内と軽作業のアルバイトをしていました」
郷を煮やした岡田さんは、問い合わせ窓口から市長宛に直談判のメールを送る。
〈ヘーゼルナッツ栽培は、長野市の未来を考えた施策でもある。長野の未来を憂う者同士、同じ方向を向かないといけないのになぜ邪魔をするのか〉
メール送信から2分後。市長秘書から電話がきて、すぐに話し合いの場が設けられることになった。
建築指導課の責任者との協議を経て、特例として建設を認められることになり、2014年7月、ついにふるフルがオープン。
ヘーゼルナッツが実るまでの間、近隣の農家から仕入れた果物や野菜でつくった生アイスを販売し、収入を得た。