講師として指導できる「交流分析士インストラクター」まで取得したものの、なかなか実務にはつながらなかった。交流分析について解説するYouTubeも始めたが、再生回数が伸びない。
「YouTuberの友人に聞きながら始めたんだけど、20回くらいしか再生されなくて。動画を6本作ったところで、もう嫌だ!と思いました(笑)」
2023年の春、YouTubeをどう伸ばしていくべきか友人に相談すると、ブランディングしてくれるという。
まずは友人とともに、これまでの人生を振り返り、棚卸ししていった。すると次第に、自分が大切にしていることが見えてきたという。
「ラジオの生放送で目指しているのは、ゲストやリスナーの方に、ちょっと口角が上がるような、ふわっと温かくなるような時間を過ごしてもらうことです」
でも、と塚原さんは続ける。
「ラジオでゲストの方と出会えても、一見さんになっちゃうのが寂しいところでした。だから、ラジオ経験や資格を活かして、心の栄養の渡し合いができる場所をつくれないかなぁと考えたんです」
心の栄養とはどういうことだろう。
「挨拶とか言葉とか、ハグもそうだし、時には怒りまで含めて、相手に向けるすべての行為は受け取り手にとって『心の栄養』になるんですよ。心理学ではこれをストロークと呼びます。この『栄養』が足りなくなると、人は変な行動をします。例えば、母親などの身近な人に喧嘩を仕掛けてみたり、わざと嫌なことを言ってみたり。嫌な会話って不快だけれど、その刺激も実は栄養になっている。この心の栄養がないと、人は生きていけないの」
考えがまとまってくると、友人が言った。
「スナックがいいんじゃない?」
「いやいや、私60歳だよ? お酒は好きだけど飲食の経験もほとんどないし、無理でしょう」
店を持つなんてリスクしかない、怖いーー。及び腰だった塚原さんを後押ししたのは友人のひと言だった。
「毎日がホームパーティだと思えばいい」
塚原さんは当時を思い出して笑う。
「ホームパーティかぁ、それならできるかもって思っちゃって(笑)。昔ね、アメリカのマイアミに2年くらい住んでいたことがあって、毎日のようにホームパーティをしてたんですよ。それがすごく楽しくて今でもよく覚えていたから、やってみよう!と思いました」