未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
284

心の栄養を得られる居場所「コミュニティースナックまさこ」を訪ねて ママがラジオパーソナリティ!? お酒を飲まない私のスナックデビュー

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.284 |10 July 2025
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#2ラジオが音楽を教えてくれた

18時50分、開店の10分前にスナックの扉が開いた。店を訪れたのは、常連だという男性。

彼がスナックまさこを知ったきっかけは、塚原さんがパーソナリティを務めるSBCラジオ「もっと!まつもと」で流した音楽だったという。

「アメリカのロックバンド、リトル・フィートの曲が流れてきて驚いたよ。地方局のラジオで、こんなマニアックな曲がかかるなんて、選曲した人は変態だと思ったね。それから興味を持ってラジオを聞くようになって、店を出すというから通うようになったの」

リスナーが客として来店してくれることは多いそうだ。店内にはたくさんのレコードが置かれていて、客のリクエストに合わせて音楽が変わる。ポツポツと客が訪れて賑やかになった店内では、アカペラで歌い始める人もいれば、酒を片手にその曲の思い出を語る人もいた。

パッケージがレトロで可愛いレコードたち。「選んでみる?」と言われ、選ばせてもらった。唯一知っていたQueenをチョイス。

塚原さんは話す。

「音楽が好きになったのは、中学生の時。当時、ヒットチャートを紹介するラジオ番組があってね、カセットテープに録音して毎日聞いてた。ラジオが音楽を教えてくれたんです」

ラジオがきっかけで音楽好きになった少女は、数十年の時を経てラジオパーソナリティになった。塚原さんは2013年からの12年、月曜から金曜まで毎日ラジオに出演し、自身が選曲した音楽をかけている。

ママの塚原正子さん。少しハスキーで耳ざわりのよい声と、つられて口角が上がってしまうような明るい笑顔が印象的。

そして2024年3月、60歳でスナックをオープンしてからは、生放送を終えたあと19時からスナックを開けているという。

ラジオパーソナリティとスナックのママ。一見するとつながらないユニークなキャリアだが、どのように育まれていったのだろう。

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