未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
286

北海道長万部町

6月29、30日に開催された北海道長万部町の「おしゃまんべ毛がにまつり」。
このお祭りのメインイベントのひとつ「全日本毛がに早食い競争」に参戦した。
それは、想像を超える闘いだった。
日本一を目指した決戦の結果はいかに?

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.286 |12 August 2025
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
北海道長万部町

最寄りのICから【E5】道央自動車道「国縫IC」を下車

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#1"テッペン"を狙って長万部へ

この姿を見て、カニを食べていると思う人はいないだろう。(撮影:サオリス・ユーフラテス)

ハンバーガーを食べるように、ガブリッと毛ガニの胴体にかぶりつく。

もちろん46年の人生で初めて、恐らくこれから先も二度とないだろう。贅沢といえば贅沢、もったいないといえばもったいない……けど、そんなことを考える余裕はなかった。

僕は、6月29、30日に北海道の長万部町で開催された「おしゃまんべ毛がにまつり」の2日目、「全日本毛がに早食い競争」に挑んでいた。出場者は北海道内外から集った30名で、最も遠方の人はなんと奈良県から参戦。

ルールはいたってシンプルだ。タイムリミットは90秒。その間に、一杯の毛ガニをどれだけ食べられるのかの勝負になる。スタート前と90秒後に毛ガニの重さを計測し、その差が大きい人が日本一の称号を得る。取材の前日、僕は勝利のヒントを得ていた。

「優勝するような人は、別世界の食べ方なんですよ。90秒しかないので、味わうなんてもんじゃなくて、詰め込むんです。胴体が一番重いから足は後回しで、ビロビロした食べられない部分(エラ)も、殻もぜんぶ食べちゃうんですよね。口から血を出しながら食べる人もいます」

「カニは食ってもガニ食うな」という言葉がある。ガニとは、甲羅を外したお腹にあるエラを指す。公益財団法人・海洋生物環境研究所のホームページには「エラのところは不潔。食べて食べられないことはないが、旨くはないし、普通は食べない」とある。

流血しながら「普通は食べない」ところも食べる。「全日本毛がに早食い競争」は、僕の想像を超えていた。この決戦を制し、“テッペン”を取るために目指した「別世界」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。