動物たちが見せる「自然な行動」の最たるものは繁殖だ。その場に馴染み、リラックスして初めて元気な子どもが生まれる。
その点、4頭のプーズーは、昨年7月に南半球の真冬のチリから、真夏で「日本一暑い動物園」(小山さん)にきたにもかかわらず、環境に適応して一組のペアが出産に至ったことで、手ごたえを感じているという。
「2月9日に生まれた時、赤ちゃんの体重は592グラムで、ほんとにこれが鹿か!って思いましたね。小さい分、体温調節の能力が弱かったので、温度管理に気を使いました。お母さんも初産で神経質になっていたから、できるだけ刺激しないように気を付けました」
僕が訪れた時はすでに2800グラムになっていたけど、それでも子犬ぐらいのサイズでとても愛らしい。プーズーの赤ちゃんを見た子どもたちはみな、「小さい!」「かわいい!」と展示スペースのガラスに顔を張り付けていた。
プーズーの赤ちゃんの名前は来園者の投票でこの4月に「ラピス」に決まったのだけど、その投票数が1687票もあったというから、プーズーの人気がうかがえる。ちなみに、ラピスの由来は、チリ産の宝石「ラピスラズリ」に由来するそうだ。確かに、ラピスは埼玉県こども動物自然公園の宝物である。

川内イオ