小山さんのこだわりは、プーズーの見せ方にも及ぶ。僕が知る動物園はどこも、壁のないオープンな場所で鹿を展示している。しかし、プーズーの施設は木の壁で覆われていて、ところどころにある窓からのぞくスタイルだ。飼育施設内は森で暮らすプーズーの生息地を模しているから、木や草が生えていて、小さなプーズーが木陰に隠れてしまうこともある。それが、小山さんの狙いだ。
「どこからでも見えると、パッと見て終わってしまうと思うんです。それよりも、窓からのぞいて、どこにいるかな? と目を凝らして探すほうが楽しいじゃないですか」
確かに、僕も子どもたちと並んでプーズーの姿を探して窓にへばりつき、見つけた時は「おお、いた!」と声をあげていた。見事に小山さんの術中にはまっている。
ペンギンヒルズでは、ヒルズ内にテントを張り、一泊する「ペンギンキャンプ」など大胆な企画を実行してきた小山さん。インタビューの最後に「将来、プーズーの展示でも試してみたいことはありますか?」と尋ねたら、「これは個人的な想いなんですけどね」と前置きしながら、とんでもなく魅力的なプランを明かしてくれた。
「プーズーとペンギンの生息地は近いんですよ。だから、一緒に飼うことができたら楽しいかなって。ペンギンの丘の草の管理が大変なんで、プーズーが食べてくれたらいいなあと思っています(笑)。ペンギンの後ろからプーズーがひゅっと顔を出したら、面白いと思いませんか?」
それ、間違いなく面白い! 越えなきゃいけない壁はたくさんありそうだけど、絶対観たい! 僕は一瞬、仕事を忘れて鼻息を荒くしながら、小山さんに実現を訴えていた。

川内イオ