未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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世界最小の鹿を“のぞき”に行きませんか?

埼玉にプーズーがやってきた!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.90 |10 May 2017
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#7飼育係が抱く夢

プーズーの展示施設の入り口。早くその姿を見たくて、窓に駆けよる子どもたち多数

 小山さんのこだわりは、プーズーの見せ方にも及ぶ。僕が知る動物園はどこも、壁のないオープンな場所で鹿を展示している。しかし、プーズーの施設は木の壁で覆われていて、ところどころにある窓からのぞくスタイルだ。飼育施設内は森で暮らすプーズーの生息地を模しているから、木や草が生えていて、小さなプーズーが木陰に隠れてしまうこともある。それが、小山さんの狙いだ。

「どこからでも見えると、パッと見て終わってしまうと思うんです。それよりも、窓からのぞいて、どこにいるかな? と目を凝らして探すほうが楽しいじゃないですか」

 確かに、僕も子どもたちと並んでプーズーの姿を探して窓にへばりつき、見つけた時は「おお、いた!」と声をあげていた。見事に小山さんの術中にはまっている。

 ペンギンヒルズでは、ヒルズ内にテントを張り、一泊する「ペンギンキャンプ」など大胆な企画を実行してきた小山さん。インタビューの最後に「将来、プーズーの展示でも試してみたいことはありますか?」と尋ねたら、「これは個人的な想いなんですけどね」と前置きしながら、とんでもなく魅力的なプランを明かしてくれた。

「プーズーとペンギンの生息地は近いんですよ。だから、一緒に飼うことができたら楽しいかなって。ペンギンの丘の草の管理が大変なんで、プーズーが食べてくれたらいいなあと思っています(笑)。ペンギンの後ろからプーズーがひゅっと顔を出したら、面白いと思いませんか?」

 それ、間違いなく面白い! 越えなきゃいけない壁はたくさんありそうだけど、絶対観たい! 僕は一瞬、仕事を忘れて鼻息を荒くしながら、小山さんに実現を訴えていた。

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未知の細道 No.90

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。