
クラウドファンディングと並行して、積極的に営業もした。東急ハンズなどに「催事をやらせてください」とアプローチ。最初の頃に与えられたのはとても小さなスペースだったが、家電売り場でスカパーの契約を取りまくっていた腕前は、衰えていなかった。
「いくらおいしいと伝えても、やっぱり飲まないとわからないので、店頭販売はすごく大切です。自分が好きで売りたいものを全身全霊で営業するから、多い時は試飲した人の9割ぐらいが買ってくれますよ。ある年のクリスマスには、1日で30万円売りました」
場所を貸している店舗側も、エレナさんの圧倒的な営業力を認めのだろう。東急ハンズ、酒販店などで毎月催事を開催できるようになり、売り場の面積も広くなった。
クラウドファンディングと催事で「ミードは売れる!」と確信したエレナさんは、「ミードを造る」という大きな目標に向かって、全速力で駆け出す。
お酒を造るには、酒類製造免許が必要だ。これは、酒類販売免許とは比べ物にならないほど取得が難しいことで知られる。
「提出書類には、年間6000リットル造ってそれをいかに売るのかを書かなければいけないんです。それはクラウドファンディングや催事の実績を書けるとして、一番ハードルが高いのは、お酒を造る場所を確保し、設備を入れて、保健所と消防署の検査を受けて合格してから、最終面談になること。このタイミングで不合格になる場合もあるんです」
酒類製造免許を取得するには、醸造所が完成していなければならない。その場所として着目したのが、埼玉県の秩父エリアだった。「ちちぶ乾杯共和国」と名乗る秩父エリアはウイスキー、ビール、日本酒、焼酎、ワインが造られている酒どころ。そのうえ、東京から通える距離にありながら、おいしい水と蜂蜜の採取に欠かせない豊かな自然がある。また、エレナさんの夫が埼玉出身で、よく家族で秩父にキャンプに来ていたという縁もあった。