いわき市に、恐竜が生きた白亜紀を今に伝える貴重な地層があることは、あまり知られていないかもしれない。
アンモナイトセンターから車で数分の場所には、ドラえもん劇場長編アニメ「のび太の恐竜」に登場した恐竜ピー助のモデル、フタバサウルス発見の地もある(映画ではフタバスズキリュウとして登場する)。いわきは知る人ぞ知る化石王国なのだ。
市街地から北に車で30分ほど、山に囲まれたのどかな田畑の間を走り抜けた先に、「いわき市アンモナイトセンター」が現れた。
センターでは毎週土日、午前・午後の2回、体験発掘会が行われている。この日は春休み期間中のため、発掘開始30分前にもかかわらず、駐車場はほぼ満車。チケット売り場には親子連れが行列をつくり、「化石、とるぞー!!」の熱気が満ちていた。
いわき市内在住の小中高校生や専修学校及び高専生は、土日に限り無料で体験できるため、リピーターも多いそう。県外からの参加者も多く、昨年は遠くオーストラリアから訪れた人もいたという。
館内に入ると、直径約1メートル近い巨大アンモナイトたちが出迎えてくれた。このうちのひとつは、センターの体験発掘場で掘り出されたものだという。
アンモナイトセンター研究員の歌川史哲さんによると、アンモナイトはかつて1万種ほど存在し、大きさも直径2メートル近いものから1センチ程度のものまで様々だったという。
館内では、巨大アンモナイト化石が密集して埋まった状態を見学することもできる。そのような場所は、日本では唯一ここだけ。世界でも数ヶ所しかないという。
体験発掘では、アンモナイトはもちろん、恐竜の骨やサメの歯、二枚貝などと出会うこともある。
もしも、研究対象になるような価値のある化石を掘り出した場合には、その化石は栄誉ある「没収」に! 残念ながら、持ち帰ることはできない。
過去には、初めて発掘に訪れた若い夫婦がハドロサウルスの腕の付け根を見つけたことがあった。また5歳の女の子が、クビナガリュウの歯を発見したこともあるという。
「たまたま発掘場に黒い塊が落ちていたみたいで、『これなーに?』って女の子が拾ったのが、クビナガリュウの歯だったんですよ」と歌川さん。
「そ、そんなことがあるんですか……?」
これは、私でも、とんでもないお宝をゲットできるチャンスがあるのでは?と一気に色めき立った私。
「ま、でもそんなことはめったになくて、没収化石のほとんどは何度も来てる人がとるんですけどね」
私の胸の内を見透かしたかのように、歌川さんは優しく現実を教えてくれるのだった。