福島県いわき市
福島県いわき市は、知る人ぞ知る化石の街だ。
ここには約8900万年前から8500万年前までの白亜紀の地層が眠り、恐竜など太古の生物が生きていた証拠が多く残されている。
アンモナイトとは一体どのような生き物だったのか。化石発掘の魅力とは……?
初めての発掘にも挑戦しながら、遥か昔の地球にふれる旅をした。
最寄りのICから【E6】常磐自動車道「いわき中央IC」を下車
最寄りのICから【E6】常磐自動車道「いわき中央IC」を下車
今は亡き祖父と、一度だけ2人きりで出かけたことがある。小学生だった私を喜ばせたいと、祖父が思案して連れて行ってくれたのが、とある化石展だった。
化石展は灰色がかった色のない世界に思えて、心が浮き立つことはなかった。けれど、自分の背丈ほどもある巨大アンモナイトには目を奪われた。
らせん状に渦を巻く美しいフォルムと圧倒的な存在感。
遠い昔に、この巨大アンモナイトが海を泳いでいたとは、にわかに信じられなかった。
お土産コーナーで心奪われたのも、やはり手のひらサイズのアンモナイト。ついさっき岩から取り出されたばかりのように粗削り。原始的とも言える佇まいに目をみはった。
値札をみると小学生には高価すぎたし、それを持ち帰ることは私には許されない気がした。そして迷った末に、私はもう少し手頃で、ぴかぴかに磨きあげられた三葉虫の化石を選んだのだった。
祖父は「ほんとうにそれでいいのかい?」私に問いかけた。もしかすると私の本当の気持ちは見透かされていたのかもしれない。
年月が経ち、息子と「知られざる恐竜王国ニッポン」のDVDを見ている時、ふと、あのアンモナイトの姿が浮かんだ。
自分の手で岩を割り、古代の生物と出会うとき一体どんな気持ちがするのだろう。
掘り出されたばかりの化石と出会ってみたい、そんな気持ちが強くなっていた。
どこか本格的な発掘ができる場所はないものか。
そう思って調べて見つけたのが「いわき市アンモナイトセンター」。約8900万年前の地層から、恐竜やアンモナイト、コハクなどの化石が次々と発見されてきた場所だ。
しかも、一般の人でも本格的な発掘が体験できるという。
桜が咲き始めた春の週末、私はいわき市へ向かった。