ちなみにアンモナイトセンター研究員の歌川さんは、どうして古生物学研究者の道へ進んだのか。聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「小学生の頃、NHK教育テレビの天才てれびくんで『恐竜惑星』っていうアニメがやってたんですよ。ダチョウ倶楽部が司会をやっていた時代ですね」
なんと歌川さんのきっかけは、テレビアニメだった。歌川さんによると、30代後半から40代半ばくらいまでの古生物研究者の中には、『恐竜惑星』ファンは少なくないという。
実は、子どもの頃「アンモナイトセンター」にも来たことがあるという歌川さん。
「ここは1992年に開館したんですけど、僕が5、6歳のころかな? 恐竜惑星に影響を受けて、アンモナイトセンターができてすぐの頃に連れてきてもらったんです。今でも実家に、その時の二枚貝とサメの歯の化石が置いてありますよ」
その後一旦興味は薄れたが、高校生のとき家族で参加したツアーで古生物研究への情熱が再燃した。国立科学博物館が主催する中国・内モンゴルのエレンホトへの旅だった。
「エレンホトでは素人でも、比較的簡単に恐竜の骨を掘れちゃうんです。砂漠のなかでテント生活しながら、1日中化石集めをしました。夜は食堂テントで『今日はなにとれたの?』と、古生物学研究者の先生がその場で全部鑑定してくれるんですよ。今日の僕みたいに」
その体験が忘れられず、案内人の先生に「古生物学ができる大学はどこか?」と尋ね、筑波大学で博士課程まで修了した。
大学では、伊豆半島の古生物研究に取り組んだ。伊豆半島では約100万年前から1000万年前の化石が見つかる。
「化石の記録を見ると、過去に南の熱帯にいた生物が段々と減っていき、現在に近くなるほど本州近くの生物が増えていくのがわかるんです」
化石の研究から、伊豆半島は南の方にあった島が北上して、本州にぶつかってできたというダイナミックな地球の変遷がわかってきたのだという。
しかし、意外なことに歌川さんは化石発掘が得意ではないそうだ。
「化石を研究する人には、化石自体が大好きな人と、化石は研究材料として使うけど、それほどでもないという人がいるんです。化石が大好きな人は、化石の形態や特徴をずっと見ていられる人。僕は化石を使って過去の地球環境の変遷を研究するのが好きなんです。でも化石発掘は得意じゃないかな」
この言葉で、化石発掘と言えども、さまざまな関わり方があることに気づかされた。
化石発掘が得意な人とは、一体どんな人なのだろうか?
「もちろん地質学の理論や、科学的な知見から、このあたりは化石が多そうなどの予測はできます。でも、やっぱり化石に愛されている人っているのかなと思いますね。研究室の大先輩の話ですが、山奥を歩いていたときに、たまたま『この岩石、怪しいな』と持って帰って調べたら、日本最古の化石だったということもありますからね」