それからは、公式Xから発信される成長記録をチェックするのが楽しみになった。 一般公開日が発表されたときには、子どもたちと「初日に絶対見に行こう!!!」と鼻息荒く約束を交わした。いいねの数もどんどん伸び、SNSでの反響も大きい。
けれど、その数日後。オスの赤ちゃんオオカミが体調を崩したという知らせが投稿された。
信じられなかった。あんなに元気そうだったのに。「どうか、元気に育って……」スマホの画面越しに何度も祈ったけれど、その願いが届くことはなかった。ほどなくして、メスの赤ちゃんにもふらつきが見られたため、一般公開は延期されることになった。
そのとき、私はハッとした。
オオカミの赤ちゃんが生まれたことに浮かれていたけれど、小さな命が、しかも野生動物が人間の飼育下で無事に育つことは、当たり前でも簡単なことでもない。その裏では、命をつなごうと懸命に尽くした飼育員さんたちがいたはずだ。
きっと、想像以上の難しさや、悔しさがあったのではないか。
それから数ヶ月が経ち、迎えた2024年9月の一般公開日。公式Xに投稿された写真には、オオカミ家族の姿が写っていた。その穏やかな様子に思わず目を細めた。
子どもは「真白(ましろ)」と名付けられた。
赤ちゃんのときはほわほわの茶色の毛だったのに、すっかり雪のような毛並みに成長している。
真白誕生から成長までの裏側を、いつか飼育員さんに聞いてみたい。年が明けて、新調した手帳の“やりたいことリスト”に「真白と飼育員さんに会いに行く」と書いた。