未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
282

栃木県那須郡

2024年5月、栃木県・那須どうぶつ王国で、日本で初めてホッキョクオオカミの赤ちゃんが誕生した。“幻の白いオオカミ”とも呼ばれるその姿に、胸をときめかせた人も多いだろう。その裏側にはどんな物語があるのだろう。飼育員さんたちの奮闘を知りたくて、那須どうぶつ王国を訪ねた。

文= 奥村サヤ
写真= 奥村サヤ
未知の細道 No.282 |10 June 2025
  • 名人
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栃木県那須郡

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#1“幻の白いオオカミ”との、忘れられない出会い

それは一目惚れだったかもしれない。

6月6日、娘の6歳の誕生日に訪れた「那須どうぶつ王国」で、生まれてはじめて“白いオオカミ”を見たときのことだ。ガラス越しに広がる、針葉樹の森のような飼育場。その奥からゆっくりと姿を現し、落ち着いた足取りで勇壮に歩く姿に、一瞬で目を奪われた。

雪に溶け込むような真っ白な毛並みと、スラリとした長い手足。凛とした気品をまとって、ただそこにいるだけなのに目が離せなかった。

主役の娘を差し置いて、ガラスにへばりつくように見つめていると、なんとこちらに向かって歩いて来る。「ファンサービスしてくれるの……!?」いそいでシャッターを切る。ピースをする娘のうしろで、オオカミは「なんてことないよ」とでも言うように涼しい顔をしていた。

“幻の白いオオカミ”とも呼ばれるホッキョクオオカミは、北極点に近いグリーンランド北部に生息している。マイナス50度にもなる厳しい環境のなかで暮らしているため、その生態はまだ解明されていないことも多いのだそう。

人を寄せ付けない、極限の世界を生き抜くオオカミ。けれど、ガラス越しに見る表情はやわらかく、瞳の奥は果てしなく優しい。その日は、広い園内を楽しみながらも、彼らのことで頭がいっぱいだった。娘もすっかり虜となったようで、帰りのお土産コーナーでは白いオオカミのぬいぐるみが誕生日のプレゼントとして抜てきされた。

「しろーどん」と名付けられたその子は、北海道にもキャンプにも、家族のお出かけにいつも連れ出された。見た目が「くろーどん」に近づき、くたくたになった今でも娘の相棒だ。

「那須どうぶつ王国」でホッキョクオオカミに赤ちゃんが生まれたというニュースを目にしたのは、2024年5月のこと。絶滅危惧種であるホッキョクオオカミの繁殖は、日本初の快挙だ。

那須どうぶつ王国の公式Xが投稿した写真には、2匹の小さなオオカミがぴったりと寄り添っている。見た瞬間、目からハートがでた。いいねを100万回押したい!!!

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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