「そういえば、もう何年も見てないなあ。まだ残っているのかなあ」と言いながら探しに行ってくれた平野さんが、「ありましたよー!」とファイルを抱えて戻ってきた。
イメージ図を描いたのは、那須どうぶつ王国で受付スタッフを務める永井麻美さん。18年間、園の顔として来園者を迎え続けてきたベテランだ。
子どもの頃から絵を描くのが好きだったという永井さんは、構想をイメージ図として描き起こす大役を任された。とはいえ、自ら「描きたい」と手を挙げたわけではなかったという。永井さんは、こう振り返る。
「『永井さん、絵上手だったよね?』って言われて、『じゃあ、描いてみる?』って流れで描くことになっちゃったんです。でも、園長のこだわりがとにかく強くて細かいので、ダメ出しの嵐でした。『この動物はこんな顔じゃない!』とか、『自然界にこんな地層はない!』とか(笑)。内心、『そんなのわかんないよ?』って思いながらも、悔しくて次は絶対に文句を言わせないぞって気持ちでやりきりました」
永井さんのスケッチを見せてもらって、思わず「すごっ……!」と声が出てしまった。想像以上に、イメージ図そのままなのだ。






スタッフの皆さんが、どれだけ丁寧に“園長の頭のなか”を形にしようとしてきたのかが伝わってきて胸が熱くなった。
そして、「これが最後に描いたスケッチです」と見せてくれたのが「オオカミの丘」。はじめてデジタル描に挑戦し、試行錯誤しながら仕上げたという。
そこには北極圏の森の風景があった。私がホッキョクオオカミに出会った場所が、いかに佐藤さんのイメージ、永井さんのスケッチを忠実に再現して作られたのかを知り、胸がいっぱいになった。


気づけば、取材の時間だ。永井さんにお礼を伝え、真白の飼育員さんのもとへ向かった。