聞けば、開園20周年を記念して2017年にオープンした「熱帯の森」は、スタッフ総出でつくり上げた施設なのだそう。
「ここは、昨年亡くなった前園長・佐藤哲也の頭の中にあったイメージをもとにつくられた施設です。設計図はなく、頭の中にある構想を聞き取り、それを絵の得意なスタッフがスケッチに描き起こしました。木の生え方ひとつまで何度も描き直しが入るほど、細部までこだわり抜かれていて。スケッチをもとに、また別のスタッフが図面を起こし、工事が進められたんです。土台づくりや造形など、実際の作業も私たちも手伝いました」
前園長の頭のなかにあったのは、動物たちがありのままに暮らす空間に、人間がそっと入り込ませてもらうようなイメージだったのかもしれない。まず、熱帯の森には柵がない。手を伸ばせば届く近さで、 鳥が羽ばたき、ナマケモノがゆっくりと枝を渡っていく。
取材ということを忘れて、気づけば夢中でこの空間を楽しんでしまった。我に返って後ろを振り向くと、平野さんが「みんなこうなるんですよ~」と嬉しそうににこにこしていた。