未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
284

長野県松本市

長野県松本市、駅から徒歩15分ほどの場所にユニークなスナックがある。お酒を飲まない人も、誰かとお喋りしたい人も、心がちょっと疲れた人も、地元の人も、旅人も。いろいろな人に開かれた「コミュニティースナックまさこ」。ママはなんと、現役のラジオパーソナリティだ。スナックに憧れを抱きながらもビビって門を叩けずにいた私は、恐る恐るその扉を開いた。

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.284 |10 July 2025
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
長野県松本市

最寄りのICから【E19】長野自動車道「松本IC」を下車

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#1スナックに憧れて

スナックに行ってみたい。欲を言うならば、行きつけのスナックがほしい。

これといった理由があるわけではない。元テレ東ディレクター・上出遼平さんの著書『ありえない仕事術』に、「スナックで出会った人たちとチームになり仕事をするようになった」とワクワクするようなことが書かれていたとか、清野とおるさんの漫画『さよならキャンドル』で描かれるスナックでの強烈な出会いに憧れを抱いたとか。

とにかくスナックに行けば、未知の体験ができるような気がした。恥ずかしながら、子どもの「ディズニーランドに行ってみたい」と同じような感覚である。

じつは昨年、高校時代の友人と「スナックに行こう」と赤羽を訪れたことがある。ネットで店を検索してくれていた友人が「ここかも」と指差したのは、入り口一帯が「可愛い子いるよ」などと書かれた張り紙で埋め尽くされた、イケナイ香りのするスナックだった。私たちは「……なんかすごいね」「どうする?」「お金足りるかなあ」などとつぶやきながらジリジリと後ずさりして、結局近くのカフェでケーキを食べて帰ったのだった。

そもそも私はお酒を飲まない。知らない人と出会ってすぐに盛り上がれるタイプでもない。スナックに入ったとて、所在なさげにソフトドリンクを口に運び続けるのだろう……。諦めかけていた頃、次の取材に向けて面白い人を探すために読んでいた松本経済新聞で、長野県松本市にある「コミュニティースナックまさこ」というお店の記事を見つけた。

現役ラジオパーソナリティで、交流分析士インストラクターの資格を持つママが営むお店で、「ひとりで静かに飲みたい人も、お酒が飲めない人も、どんな人でも心地よく過ごせる空間にしたい」とある。

ここなら私でも行けるんじゃない……? 

前述したような個人的な思いを並べた取材依頼を送ると、店主の塚原正子さんは「嬉しい連絡をありがとうございます」と取材を快諾してくれたのだった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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