
円盤形の建物の横に、「UNITED STATES」と赤字で書かれたロケットがそびえ立っている。
全長26.6メートル。アメリカ製のレッドストーン・ロケットだ。これが本物だと聞いて、まず驚いた。日本でNASAの本物のロケットが見られるのは、ここだけらしい。
建物に入り、エレベーターに乗り込む。扉が閉まった瞬間、照明が消えた。
「わっ」
一瞬びっくりしたが、そうだ、これだ。中学生の時も、この演出に驚いて声を上げた記憶がある。薄暗い空間に惑星が浮かび上がり、ゆっくりと上昇していく。まるで宇宙へ向かっているような感覚になる。
ドアが開くと、目の前には扇形の展示室が広がった。
「こちらがアメリカが開発した最初の宇宙船の『マーキュリー』です」
今回特別に館内を案内してくれたのは、この博物館の発案者、高野誠鮮(じょうせん)さん(以下、高野さん)の息子であり、営業主任の高野誠明(じょうめい)さん(以下、誠明さん)。
「外にあったレッドストーン・ロケットの先端部分がこれですね。一人乗りで宇宙船としてはかなり小型です」
円すい形のマーキュリー宇宙船は、なかを覗くと思っていたよりずっとコンパクトだった。大人ひとりがやっとで入れるくらいのサイズだ。こんな狭い空間に人が乗って、本当に宇宙に行ったのか……。
次の瞬間、その隣に並ぶ丸い物体を見て、思わず声がでた。「うわあ」。
「こちらは、実際に宇宙から帰還した旧ソ連の宇宙船『ボストーク』です」
誠明さんの説明を聞きながら、私は思わず近づいた。
表面が黒く焼け焦げている。大気圏再突入の際の摩擦熱で焼けたのだという。手を伸ばせば触れそうな距離に、宇宙から帰ってきた本物の、宇宙船がある。
「日本で旧ソ連時代の宇宙船を実際に見られるのは、うちだけなんですよ」
なんだろう、この感覚は。
子どもの頃、図鑑で見た宇宙船。テレビで見たロケット打ち上げ。それらは確かに「宇宙」への憧れをかき立てたけれど、どこか遠い世界の話だった。でも今、目の前にあるこの焦げた金属の塊は、確実に宇宙へ行って、そして帰ってきたものなのだ。
「うわあ……」
また思わず声が漏れた。全身に鳥肌が立つのを感じた。