未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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宇宙の出島「コスモアイル羽咋」へ――本物を信じた男の軌跡を追って あなたはUFOを見たことがありますか?

文= きえフェルナンデス
写真= きえフェルナンデス
未知の細道 No.294 |10 December 2025
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#3NASAから100年レンタルされた月面車

宇宙科学展示室。左からアポロ司令船、モルニア通信衛星、ルナ・マーズローバー

次に案内されたのは、なんとも奇妙な形をした車だった。

巨大なメッシュ状のタイヤ。ゴツゴツとした車体。まるで子どもが想像で描いた「未来の車」のようだ。

「これ、月面車ルナ・マーズローバーの試作機です。NASAから100年間レンタルしてるんです」

「……100年?」聞き間違いかと思った。

「ええ。買うと7億5000万円かかる代物ですが、父が『100年貸してください』と申請書に書いたら、NASAの広報部長が『面白い。貸してやれ』って」誠明さんは笑いながら続ける。

「先日、NASAからメールが来まして。『今後も借り続けますか?』と。もちろん借り続けます。あと70年ありますから。その頃には、ぼくいないんですけど(笑)」

なんという壮大な話だろう。100年レンタル。そんな契約、聞いたことがない。

隕石は直接触ることができる。ずしっと重い

館内には他にも、驚くべき展示物が並んでいる。アポロ計画で使われた司令船、アポロ17号が持ち帰ってきた月の石、旧ソ連のモルニア通信衛星……。どれも、NASAや旧ソ連から羽咋市が正式に譲渡または購入した「本物」だ。

中でも私の心を掴んだのは、天井に吊るされた「ボイジャー惑星探査機」の展示だった。

アメリカのボイジャー惑星探査機

ボイジャーは、人類史上、地球から最も遠い場所まで行った惑星探査機だ。

かつて木星、土星、天王星、海王星に接近し、観測を行うことに成功したという。でも、私が一番驚いたのは、別のことだった。

「この探査機には、地球外知的生命体へのメッセージを収録したレコード盤が取り付けられているんです」

ボイジャー惑星探査機に装着されたレコード盤

その名もゴールデンレコード。地球の音や音楽、55の言語でのあいさつ、そして地球の位置を示す情報が刻まれている。もし、どこかの星の誰かがこれを見つけたらーー。そんな壮大な「もし」に、私はすっかり魅了されてしまった。

「実際にどんな音が入っているか、聞いてみますか?」

誠明さんの案内で、収録されている音声を聞いた。バッハのピアノ曲、日本の尺八、自然の音、鳥のさえずり、そして「こんにちは」という各国の挨拶。宇宙の彼方を飛び続けるこのメッセージが、いつか誰かに届くかもしれない。そう想像するだけで、胸が高鳴り、なんだかワクワクした。

宇宙の魅力にすっかり取り憑かれた私は、「誠明さんも宇宙がお好きなんですか?」と尋ねると意外な答えが返ってきた。

「実は僕、最初は宇宙にまったく興味がなかったんです」そう誠明さんは打ち明ける。

「でも働いて初めて、ここに何があるか知りました。“本物”の価値も、父のすごさも」

高野誠明さんとコスモアイル羽咋のキャラクターの「サンダーくん」。
サンダーくんは不時着した宇宙人で、現在は館でアルバイト中

展示物の中でもひときわ存在感を放っているのが、旧ソ連の「月面探査機ルナ24号」のバックアップ機だった。

世界で唯一ここでしか見られない旧ソ連の月面探査機ルナ24号のバックアップ機

「これはめちゃくちゃ価値が高いですよ」と誠明さんの声も弾む。

「旧ソ連の無人探査機である『ルナ』は、世界でこれ一つしか残っていないそうです。父が交渉した当時は、1000万円で購入できましたが、アメリカのオークション会社から提示された現在の金額は13億円になっていました」

13億円……ゴクリと喉がなる。しかも世界にひとつしかない月面探査機が、ここ羽咋で見ることができるなんて。

「宇宙好きの人たちからは、ここは聖地と呼ばれているんです」

確かに、これだけの「本物」が集まっている場所は、日本中探してもないだろう。そう思うと同時に、謎が深まる。……なぜ、こんな田舎町に?

その答えを知りたくて、私は後日、コスモアイル羽咋の発案者である高野誠鮮さんを訪ねた。

貸付領収書には「Mr.ジョウセン・タカノ」の文字が。
「まるで個人で譲り受けたみたいですよね(笑)」と誠明さん
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「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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