
1996年7月1日、「コスモアイル羽咋」が完成した。
そこに至る道のりは、常識を超えた「ハッタリ」と「奇跡」の連続だった。なぜ高野さんは、そこまで“本物”にこだわったのか。
「答えは簡単です。張りぼてじゃ意味がないから」力強い声で高野さんは答える。
「子どもたちに本物を感じてほしかった。本物を知ったら、偽物が分かるようになります」
コスモアイル羽咋のレッドストーン・ロケットの前には、ニュートンのりんごの木がある。
「あれは本当に、ロンドン郊外のニュートンの生家にあったりんごの枝なんですよ。それを地元のりんご農家さんに接ぎ木してもらいました。子どもたちに『これが本当にニュートンのりんごだ』って薄く切って、食べてもらってます。ただ、酸っぱくて食べられたものじゃないけどね(笑)」
宇宙への夢を語る高野さんは、羽咋市の限界集落・神子原を独創的な発想で再生させたことでも知られている。大学生の時、恩師であるコールマン大佐にそうしたように、ローマ教皇宛てに手紙を書いて神子原の米をローマ教皇に献上することに成功し、「神子原米」としてブランド化。農家直営の直売所も設立した。2015年には、その取り組みが唐沢寿明主演のドラマ「ナポレオンの村」として映像化されている。
近年では、自然栽培農法の導入にも力を入れ、地域ブランドの更なる強化を目指す。
「“奇跡のりんご”の木村秋則さんの無農薬技術を、農協で教えられるようにしました。年間500人くらいが集まるんですよ。農薬、肥料、除草剤を使わない“本気”の農業を伝えています。人生一回きりなんだから、やりたいことをやる。失敗を恐れていたら何もできない。それより『成功したらどうしよう』と考えていたいんです」