未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
294

宇宙の出島「コスモアイル羽咋」へ――本物を信じた男の軌跡を追って あなたはUFOを見たことがありますか?

文= きえフェルナンデス
写真= きえフェルナンデス
未知の細道 No.294 |10 December 2025
この記事をはじめから読む

#4スーパー公務員と呼ばれた男

高野誠鮮さん。1955年、石川県羽咋市生まれ。東京で放送作家などを経て、29歳で実家の日蓮宗妙法寺を継ぐ。住職のかたわら羽咋市役所に勤務し、「UFOで町おこし」を推進。宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」を設立した。限界集落・神子原(みこはら)地区では、地元の米をローマ法王に献上し、「神子原米」のブランド化で地域を再生。これらの功績から"スーパー公務員"と呼ばれるように。2016年に市役所を退職後、住職と並行して講演活動や執筆を続けている。

と、経歴的にはこうなるのだが、高野さんの本質はこうした情報量の多いプロフィールからは見えてこない。

コスモアイル羽咋に展示してあるものすべて、高野さんが単独で交渉したものだ。いったいどうやって? その根底にあるのは、若き日に出会ったひとりの人物との出会いだった。

「コスモアイル羽咋」の仕掛け人、高野誠鮮さん

ーー僕がはじめて元国連広報担当官の、故コールマン・ヴォン・ケビュツキー大佐(以下、コールマン大佐)に出会ったのは大学生のときです。住職をしながら少年院で機械工学を教えていた父の影響で、子どもの頃から機械の構造に興味がありました。電子工学の本の表紙にロケットが写っていてワクワクして見ていたのを覚えています。

成長するにつれ、宇宙だけでなくUFOにも強く惹かれるようになりました。あるとき、コールマン大佐がUFOに精通している「別格の人物」だと聞き、どうしても会いたくなって手紙を書きました。何度かやり取りしているうちに、「お前、面白いな。一度、ニューヨークに来い」と誘われたんです。

必死でアルバイトして資金を貯め、向かいました。そこから、「ブラジルで会議がある」「次はフランクフルトだ」と、世界中引っ張り回してもらいました。「日本人の芸者との間に生まれた子だから頼むよ」なんて冗談を言いながら、色々な人を紹介してくれたんです。

「人脈とはひけらかすものではなく、分け与えて相手が喜ぶことを考えなさい」。

彼はよく言っていました。「自分が大きくなりたければ、大きな人間に接ぎ木しろ。俺に繋がったら人脈は全部分けてやる。ただし、その人脈は利用するな、活用しろ」と。UFOについてだけではなく、人との関わり方について教えてくれたのも彼でした。

大学を辞めた僕は、東京でサイエンスライターやテレビの構成作家として8年ほど働きました。

「11PM」という番組(最高視聴率48%の人気深夜番組)で、UFOの特集を担当していたのもその頃です。アメリカで取材をしていたある夜、モーテルのドアノブに手をかけた瞬間、手の甲に赤いレーザー照準がピタリと止まり、明らかな脅しを受けたこともありました。もしかすると、取り扱っていたテーマが国家機密に触れていたのかもしれません。

30歳を前に、実家の寺を継ぐため地元に戻り、羽咋市の臨時職員になりました。

役所に入って驚いたのは、会議ばかりで誰も実行しないこと。町おこしの計画書を作るのに1年かけて、「これで羽咋は変わります」なんて言ってる。僕は尋ねました。「書いた通りに世の中が動いた試し、一度でもありますか」って。

当然、怒られましたよ。「お前、臨時職員の分際で」と。でも僕は思ったんです。学習会や研修会を何百回やっても、何も変わらない。仏教用語の「修行」は、行いながら修正するから修行と書くんです。

そこで上司に「僕が、町おこしをやってもいいですか」と聞いたら、「やれるもんならやってみろ。お前は臨時職員だから1円の予算もつかないぞ」と言われました。

それで、僕は勝手に始めることにしたのです。

当時、古文書講座の担当をしていて、地元の正覚院という寺に伝わる『氣多古縁起(きたこえんぎ)』に載っている「そうはちぼん伝説」を知りました。そこにはこう書いてあった。

「西山から東山へ怪しい火が飛んでいる」

これってUFOのことじゃないか! そう思った僕は、これで町おこしをしようと決めました。

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。