未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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本場アメリカで頂点を極めたホットな味! 世界一のキューバサンドを東京で食べる。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ、三村健二、竹田りな
未知の細道 No.295 |25 December 2025
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#3インドの夜空を見上げて抱いた夢

2011年、自由を得た船井さんは初めての海外旅行に出た。行先はインド。

「なんでインドに行こうと思ったのか、今でもよくわからないんですよ。自分探しだったのかもしれません(笑)」

ガンジス川が流れる町バラナシが気に入り、3週間ほど滞在。ある日、仲良くなった宿のインド人スタッフと一緒に、屋上でぼんやりと過ごしていた。空を見上げると、東京では見たことのないような星空が広がっていた。ふと、これからどうしようかな……と考えた。スッと脳裏に浮かんできたのは、自分でも意外な言葉だった。

「居酒屋で独立しよう」

それからの行動は早かった。帰国した翌月、実家の近くの和食居酒屋に就職する。このお店で、本格的に料理を学んだ。包丁の研ぎ方など道具の手入れに始まり、調味料の意味、お刺身の扱い方、だし巻き卵の作り方など、料理の基本を叩きこまれた。

ただ、あまりに仕事がハードで、肉体的にも精神的にも疲弊してしまい、2年で退職。次に勤めたのが、蒲田エリアで多店舗展開している焼き豚屋さん「豚番長」だ。船井さんは、豚番長の社長が「命の恩人」と語る。

「自分を出していいよって任せてくれたこともあって、精神状態もどんどん回復しました。僕が考えた創作メニューを出せたのも嬉しかったし、立ち飲み屋でお客さんとの距離も近くて、本当にいい時間でした」

修業時代を振り返る船井さん。(画像提供:三村健二)

社長に恩返しをしたいという思いもあり、船井さんは全力で働いた。あっという間に10年が経っていた。そろそろ独立を、と考え始めた2023年、脳裏に浮かんだのがキューバサンドだった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。