
キューバサンドの本場は、キューバ移民の多いフロリダ州のタンパ。その初日に、運命の出会いが訪れる。
到着してすぐに入ったお店でキューバサンドを食べながらビールを飲んでいたら、現地のアメリカ人ふたりに話しかけられた。ほとんど英語を話せないものの、インドでもそうだったように、なんとなくの単語とジェスチャー、表情でコミュニケーションを取るのが得意な船井さんは、すぐに打ち解けた。
キューバサンドについて話していたら、そのアメリカ人ふたりが「明日、一番おいしいキューバサンド屋さんに連れてってやるよ」という。「その場のノリかな……」と半信半疑で連絡先を交換して迎えた翌日、ふたりがホテルまで車で迎えに来てくれた。
3人で向かったのは、「West Tampa Sandwich Shop」。キューバサンドの名店として知られ、なかでもバラク・オバマ元大統領が好んで食べた、その名も「オバマサンド」で有名だ。船井さんも、ふたりが勧めるオバマサンドを注文したところ、トマトやレタスが挟み込まれていて、キューバサンドの定義からは外れていた。フレッシュな野菜を使わないのが、キューバサンドとされているのだ。それでも「まあいいか」とかぶりついた瞬間、その風味に衝撃を受ける。
「蜂蜜を塗ってプレスしたパンがもう本当においしくて! マックグリドル(シロップ入りのパンケーキでソーセージやチーズ、たまごをサンドした商品)に近くて、ジャンクフード感はあるんだけど、誰もが楽しめそうな味でした。これはうちの蒲田キューバサンドに合う! と思いましたね」
船井さんは1カ月の滞在で、30軒以上のキューバサンド店を巡った。そのなかでも、オバマサンドは「自分に最も影響を与えたサンドウィッチ」になった。帰国後、すぐにパンに蜂蜜を垂らしてプレスしたキューバサンドを食べてみた。料理人としての直感に、狂いはなかった。