同時進行で、映画館の設計も進めた。相談したのは、兄から紹介された建築家の佐々木善樹さん。『家は買うものでなくつくるものでもなく育てるもの』(エクスナレッジ)という著書を出していて、目指す方向性が近いと感じた。映画館を作りたいと話すと、佐々木さんはこう言った。
「僕は映画が嫌いじゃないし、悪く言うつもりはないけど、銀行はお金を貸してくれないと思いますよ」
詳しく聞くと、金融機関にとって映画館は収益をあげる存在ではなく、「自己使用」とみなされるとのことだった。要するに、趣味的なマイホームシアターとして扱われるのだ。そして、金融機関には「自己使用比率が高い物件はうまくいかない」というセオリーがあり、今井さんの構想はそのセオリーのど真ん中。佐々木さんは、この状況からどう突破口を切り拓くかを考えてくれた。
「土地の広さに合わせた建物の高さ、面積などを出して、その建物を建てるためにはいくら借りる必要があり、毎月いくら返済すればいいのかというところから逆算してもらいました。そこから、映画館とカフェのお客さんがゼロだとしても月々の返済ができるような収益の設計をしてくれました」
その答えが、1階にカフェ、2階に映画館、3階から5階をシェアハウスにする複合型の建物。家賃収入を確保すれば、映画館単体で利益を出すという難題に挑む必要がなくなる。映画館、カフェと収入の柱が三本になるのは今井さんにとって心強い。映画館プロジェクトを進めるうえでこれ以上ない提案だった。