帰りはバスに乗って、日立駅まで戻ることにした。まだ4時前だが、山の中は日が暮れるのが早い。鉱山のある山の向こうからやってくるバスを待っている間、あたりはすっかり薄暗くなり、冷え冷えした空気が漂った。
バスは今日一日かけて歩いた6キロの道のりを軽快に走り、20分足らずで駅へと辿り着いた。バスの中で、ジオネットメンバーの伊東和彦さんが「いやー、面白かったですねえ」と、笑顔を見せた。正木さんも嬉しそうだ。本当だ。今は全くない線路が、まるで見えるような、その上をひたすら歩いた、そんな一日だった。
正木さんたちと別れ、日立駅をもう一度ぐるりと歩いてみた。このガラス張りの美しい駅舎からも、遠く大雄院の山中にある大煙突がはっきりと見えた。
振り返って反対側の、朝歩いてきたエスカルロードへと目をやる。戦前から今まで長い時間をかけて、交通と輸送の形、街の形をなんども変えながら、多くの物資と多くの人々が、ここ日立駅を起点に、街と山との間を行き交ってきたのだ。