館長の森さんは大阪生まれで、もともとは中学校の数学教師だった。結婚を機に退職し、夫の転勤に伴い横浜や東京・三鷹に移り住み、その後、神奈川県逗子市へ。長男が小学生の頃、子どもと一緒に楽しめることを探し、パソコン通信を通じてスライム作りを知った。
パソコン通信はインターネット普及前に利用されていたサービスだ。現在のSNSの先駆けのような存在で、電話回線を通じてメールの送受信や掲示板への書き込みなどができた。
森さんが見ていたのは、理科に興味を持つ人たちが集まる「理科の部屋」。学校の先生や大学の研究者、気象庁の職員、科学館で働く人たちがあれこれ書き込み、それを読むのが楽しみだった。そこで「スライムは簡単に作ることができる」と知り、図書館でやり方を調べ、子どもたちと一緒に試してみた。
すると、子どもたちは大喜び。長男は小学5年生、長女は小学3年生、末っ子の次男は1歳だった。スライム以外にも、合成洗濯のりを使った大きなしゃぼん玉や、水の中でも消えない花火など、自宅でできる理科実験を次々に試した。「お金も時間もそれほどかからなくて、楽しいんですよ」と森さん。この実験が、子どもたちの「やってみよう!」という気持ちを育んでくれたことも嬉しかったという。
その面白さを他の人にも伝えたいと思い、『なるほどの森』という案内を書き始めた。A4の紙に実験の方法や家で実際にやってみたようすなどをまとめ、誰でも読めるよう図書館などに置いてもらった。評判は少しずつ広まり、遠方から「送ってほしい」という声も届くようになる。