私が最初に体験したのは、3つの固体から隕石はどれかを当てる展示だ。箱の中に隠された固体を触ってみる。隕石だと思ったのは真ん中だ。「なんで?」と山浦さんに聞かれ、「ザラザラしているから」と返す。すると、「隕石ってザラザラしているんですか?」と問われて、はっとした。隕石の表面は、どうなっているのだろう。
「隕石は宇宙から大気圏をくぐり抜けて地球に降り注いできて、空気との摩擦で高温になるんです。だから表面は――」
話は宇宙へと広がっていく。
次は、カラフルな風船のなかにある粉の種類を当てる仕掛けだ。ザラっとしたイメージがあるグラニュー糖とキュキュッとした質感の片栗粉くらいはわかるだろうと思い、すべて触ってみた。しかし、まったくわからない。さすがに触っただけで全部わかる人はいないという。山浦さんは、こちらの反応を見ながら、頃合いを見てヒントを出してくれる。来館者がひとりで考えるのではなく、学芸員が隣で伴走してくれるのだ。
手厚い対応を受け、ふと気になり、1日に何人くらい来館するのか聞いてみた。「今週末はたくさん来ましたよ。8人くらいかな」というから驚いた。少ないように感じたが、ふたりで対応するにはギリギリの人数だという。
「これやってみる?」と準備してくれたのは、冬に展示している静電気を体験する装置だ。2つ重ねたプラスチックコップの外側にアルミホイルが巻かれている。コップの縁にはアルミホイルでできた短い帯が取り付けられていた。
山浦さんがコップの近くでビニールパイプに毛糸をこすりつけると、コップとコップの間に電気がたまる。触れていないのに、アルミホイルの帯がふわふわと上下に動き出した。
「このくらいでいいかな。はい、電気がたまりました。右手でこのコップを横から持ってください。何も起こらないから大丈夫ですよ」
促されて、恐る恐るコップを持つ。合図を出したら、帯の角に少しだけ指を触れるよう言われた。
「3、2、1、どうぞ!」
バッチーン!!!
これまでに経験したことのない強い静電気が走る。「ひゃぁーー!」と大きな声が出た。「何度やっても面白い」と笑う山浦さん。なぜか私も笑いが止まらない。
展示は来館者に心を開いてもらうための装置でもあるという。静電気に飛び上がって笑った時点で緊張が解け、好奇心が顔を出す。山浦さんは「本当のことを言ってもらうために、おしゃべりしやすい状態にしたいんです」と言う。遠慮や恥ずかしさを抱えたままでは、疑問はなかなか言葉にならない。心からの「なんで?」が出てきたら、連鎖が止まらなくなる。
「そうなればどんどんいけます。どんどん面白くなっちゃう」


理科ハウスの展示は面白いだけではなく、深い知識にもつながっている。例えば、トイレの展示。ふたつあるトイレのうち、ひとつは植物細胞、もうひとつは動物細胞を表している。見た目のユニークさに目を奪われがちだが、注意深く見比べると、サイズやモチーフの違いに気がつく。トイレの横には大学入試共通テスト「生物基礎」の問題が掲示されていた。受験で問われる知識も、展示の細部にまで盛り込んでいるのだ。