細々と運営するなら、可能かもしれない。新しいものは買わず、今ある展示で続けていけば、必要なのは維持費だけ。やれるだけやってみようと思い始めた頃、500万円の寄付を申し出る人が現れた。ほかにも、多くの人が応援してくれた。その思いを無駄にはできない。体が動く限りは続けようと決めた。
理科ハウスは2018年9月に一旦休館し、2019年5月に再オープンした。森さんと山浦さんは、これからの理科ハウスをどうするか、何度も話し合った。課題になったのは、入館者の年齢だ。
10年目になると、開館当時に小学生だった子どもたちは、中学生以上の年代になっていた。大きくなったから別れるのではなく、この子たちとまだ付き合っていきたいという思いがふたりのなかに芽生えていた。
この10年の間に、自分たちも科学の奥深さを知り、すっかり沼にハマっていた。その面白さをもっと伝えたいという気持ちが湧いてきた。しかし、小学生では受け止めきれない。話し合いの末、対象年齢を中学生以上に引き上げることに。科学館といえば小学生が楽しめるところと考える人が多いなか、大胆な決断だった。
この方針転換は、科学館業界を驚かせた。2018年当時も2026年現在も、多くの科学館が来館者の低年齢化に悩んでいる。展示は決して易しいわけではないのに、ふたを開けると小さな子どもが集まってしまう。幼児がいる環境では、できることが限られ、中高生たちの関心も薄れてしまうという。
理科ハウスが中学生以上を打ち出すと、小学生の子どもを持つ親たちから、「どうして入館できないのか」と聞かれることもあった。理解してもらうには時間がかかり、入館を断るのは辛かったという。それでも森さんたちは、中学生以上とじっくり向き合う科学館を選んだ。結果、理科ハウスの展示や解説はどんどん深く、濃いものになっていった。
今では、大きな科学館が「どうやって中学生以上でやっているのか」とヒアリングに来るという。