未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
304

住宅地に突然現れるアメリカンなドーナツ店 1日4000個が売れるまでの、父と息子の物語

文= 竹田りな
写真= 竹田りな
未知の細道 No.304 |11 May 2026
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#3トングで持っただけで潰れるほどの柔らかさ

オープン前の店内の様子。トレーがいっぱいになったらレジで預かってもらえるそうだ。

お店に入るとなんだか違和感があった。あれ、開店前に写真を撮らせてもらった時と、ドーナツのラインナップが変わっている気が……。

それもそのはず、それぞれのお客さんたちのトレーを見ると、これでもかとドーナツが載っている。家族で来て何人かでトレーを持っている場合もあれば、ひとつのトレーに文字どおり山盛りに載せている人もいた。

そうして並んでいるうちにも、みるみるうちにドーナツが減っていく。するとすかさず店員さんがやってきて、手際よくドーナツを並べ替え、空いたスペースに出来立てのドーナツを次々と運んでくる。

私は悩みに悩んで、一番人気のハニーディップと、次に人気があるというもっちりパフシュガー、そして「店長のおすすめ!」と書かれたカマンベールチーズスティックにしようと決めた。

カマンベールチーズがゴロゴロ入っていて、甘じょっぱさがたまらない。

そしてそのもっちりパフシュガーをトングで挟もうとしたとき。

「え?」

驚きのあまり、ドーナツを落としそうになった。あまりにもちもちで、普通にトングで挟もうとすると潰れてしまうのだ。力加減を調整し、そーっとそーっと持ち上げ、トレーに無事載せられた時には、何かに勝った気持ちになった。それと同時に、期待が膨らむ。ちなみにこのもっちりパフには、重ねないようにと注意書きがされていた。

注意書きのイラストも可愛い。

そして、さらに驚いたのは、オープン前にあんなに並んでいたハニーディップが私の数組前でなくなったこと。ハニーディップは「1家族6つまで」と決まっているのにもかかわらずである。

オープン前に撮影したハニーディップ。

狭い店内は、選びながらレジに向かって一方通行で並ぶスタイルで、戻れない仕様になっている。ハニーディップは諦めるしかないのか、と思ったら。

「ハニーディップをご希望の場合は、レジでお取りしますのでお申し付けください」

レジに並んでいる間に、すぐに新しいドーナツが運ばれてきた。なにがすごいって、私の前のお客さんもその前のお客さんも6個ずつ買っていた。そりゃあ、すぐになくなるわけだ。

無事ハニーディップも購入して、お店の外にあるイートインスペースに腰掛ける。20席ほどあり、ペット連れもOKで、ちらほら利用しているお客さんがいた。いざ、ドーナツ!

大きさだけでなく、厚みもすごい。

まず驚くのはそのサイズ感。ハニーディップは大きさも厚みもなかなかのものだ。試しに持っていた410ミリリットルのペットボトルと並べてみてもこのサイズ感である。

一口食べると、ハチミツの甘さが口に広がる。フワッフワの食感がたまらない。一気にひとつ食べ切りそうになり、すでにお腹が満たされてきていることに気づく。

  • もっちり感がすごい!もっちりパフシュガー。
  • 断面の様子。

次に取り出した、もっちりパフシュガー。案の定、指で持ったところが潰れる。「んんんんー? うっま! なんだこれ?」。あまりのもっちり具合に、私はなにを食べたんだっけ? と思うほどだった。

ここでもうお腹いっぱいになり、もうひとつは持ち帰ることにした。

食べている間にも、お店の厨房からはドン、ドン、と生地を叩きつけるような音が聞こえてくる。

そこに、ドーナツを購入して店から出てきた団体さんがやってきた。聞くと神奈川から千葉に泊まりがけで旅行に来た帰りに、朝食を食べに寄ったのだという。

「インスタを見て来たんですけど、まさかこんなに混んでいるとは思いませんでした。30~40分くらいは並んだんじゃないかな」

その時、時間はすでに11時。開店前よりは短くなっていたものの、まだ長い行列が続いていた。

ドーナツを2つ平らげた私は、一度休憩。店主の加藤利明さんと息子の康弘さんの話を聞くために16時に再訪して、目を疑った。朝と同じような行列が続いていたのだ。どうやってここまで人気店になったのだろう。

16時ごろの行列の様子。
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「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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