

1日に3000~4000個が売れるドーナツは、5、6人のスタッフの手作りだ。
「せっかく並んでくださるお客さんをドーナツがないことでガッカリさせたくない」という思いから、品薄になる時間帯を減らすよう作る量を調整してきた。康弘さんは朝6時半にお店に来て、15時、16時までハニーディップをひたすら作り続ける日もあるという。
「今の店舗は、こんなにたくさんのお客さんが来てくださることを想定していないので、厨房には6人入るともういっぱいなんです。フライヤーもひとつしかないし。だから、日々闘いです」
40種類近くあるドーナツのなにをどれぐらい出すかは、その日の朝に利明さんが決める。訪問した時にどのドーナツがあるかはタイミング次第だ。
「その日の気分で、父が新しい種類のドーナツを作ることもあります。お昼頃から急に作り始めて、正直、『今からそれ作るの? それより定番商品作ってよ!』って思うこともあります」と康弘さんは笑う。商品開発は今も利明さんがそのほとんどを担っているそうだ。
私は思わず、「どうしてここまで人気になったんだと思いますか?」と素朴な疑問を口にした。
「どうしてでしょうね。味は昔から変わっていないはずなんですよ」
利明さんは、時代の変化について、「今の人たちはおいしいものがあると知ったら、ナビとかを使って、どこまででも行くでしょう? 本当にすごいよね。僕らの時代には考えられなかったことだよ」という。
自分が「本当においしい」と信じるドーナツの味を守り、ひたむきに作り続けてきた。そうして好きなことを貫いていたら、時代に後押しされるようにSNSでも話題になり、お客さんを呼び込んだ。恐らくどちらが欠けていたとしても、今の行列にはつながらなかったのだろう。