店主の加藤利明さんは、1949年、茂原生まれの76歳。もともと飲食業に興味があったわけではなく、一般企業の会社員として関西で就職した。ドーナツとの出会いは、たまたま、だった。
「当時勤めていた会社で、新規事業としてドーナツ店を立ち上げることになって。そのチームのメンバーに選ばれて、アメリカでドーナツ作りの修行をすることになったんです」
アメリカでは、見るものすべてに驚いたという。
「僕は戦後すぐの生まれで、当時の日本は貧乏も貧乏ですよ。地面なんてもちろん土だからね。それが急に仕事でアメリカに行くことになって。アメリカに着いて空港を出たら、こんなに広いアスファルトの道路に、グリーンや赤、ピンクのネオンが輝いていて、もう別世界。ここから学ぶことがいっぱいあるなって思いましたね」
初めて降り立った瞬間からすっかりアメリカに魅了され、アメリカが大好きになった。アメリカ生活ではドーナツの作り方以外にも、マナーやファッションなど、アメリカ的な考え方も学んだ。
日本に帰ってきた後は、一号店のオープンメンバーとして、ドーナツの製造を担当した。お店は話題を集め、順調に売り上げを伸ばしていった。その一方で、利明さんは関西の文化に馴染めず、どこか居心地の悪さを感じる日々が続いたという。悩んだ末、親や兄弟がいる故郷の茂原に戻ってドーナツ店を開こうと決意する。