未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
304

住宅地に突然現れるアメリカンなドーナツ店 1日4000個が売れるまでの、父と息子の物語

文= 竹田りな
写真= 竹田りな
未知の細道 No.304 |11 May 2026
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#10ドーナツの味を守り続けるために

味の分析をしてしまうから、プライベートではドーナツを食べないという康弘さん。

今年の秋には、茂原市の本納地区に2号店の開店が控える。遠方のお客さんも車で来やすいよう、高速道路のインターチェンジに近い立地になる予定だ。機械化はせず、あくまで手作りの味にこだわる。2号店には、康弘さんが作るパンも並ぶそうだ。父と息子、ふたりの職人の味が楽しめるお店になる。
これを機に店舗を増やす予定はないのだろうか。

「あんまり店を増やすなと言ってて。目が届かないと、味が変わってしまうから。お客さんは、怖いんだよ。ちゃんと見抜くんだからね」と利明さん。康弘さんが続ける。

「今は、たくさんの方が遠くから来てくださって。この間は北海道とか岡山からも『食べに来ました!』っていうお客さんがいて、本当にありがたいですよね。お店としてはお待たせしている現状が申し訳ないので、こんなに並ばないで味わってもらえたらいいな、と思っています。一方で、『混んでるから、行きにくいな』と感じている地元の方もいると耳にするので、一号店はこのまま残して、地元のお客さんにももっと気軽に来てもらえるようにしたいです」

この話を聞いた私は、朝、お店の前ですれ違った家族のことを思い出した。

おじいさんと小さな姉妹がドーナツを買い、帰るところだった。3人で手を繋ぎ、「おばあちゃんとお母さん、喜んでくれるかなぁ」と言いながらニコニコした表情で帰っていく幸せそうな姿が忘れられない。

きっと、おじいちゃんおばあちゃんと食べたドーナツとして彼女たちの記憶に残るのだろう。彼女たちが大きくなったとき、子どもと買いに来る日がくるかもしれない。利明さんが50年近く守り続けてきた味は、康弘さんに受け継がれ、これからも人々の記憶に刻まれていく。

夜のライトアップも可愛い。でもドーナツがなくなり次第閉店してしまうので、早めの訪問がおすすめです。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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