これが大きな勘違いだとわかるのは、松殿さんと別れてから。ヒスイを探していた別の若い男性に声をかけ、松殿さんがいかにも簡単にヒスイを見つけていたという話をしたら、「その人は糸魚川でも有名なレジェンド級の人ですよ。ヒスイはなかなか採れないから希少なんです。僕なんて4回に1回ぐらいしか見つけられませんよ」と教えてくれた。たまたま教えを請うた人がレジェンドだったとは! それはそれでまた稀な体験である。
男性の言う通り、結局その日は2時間かけて海岸を探索したのにヒスイらしきものは見つけられず。ぱっと見でキレイだったシーグラス2つと、「これってもしかして……」と微かな希望を感じた石ころ4つを、翌日のフォッサマグナミュージアムの取材に持参した。
取材を申し込む際、小河原さんに簡易鑑定をお願いしていた僕は、ビニール袋に入れた石をテーブルに広げる。取材に応えていた時とは違う、鋭い視線を向ける小河原さん。緊張感が高まる。大したものはないだろうと思いながらも、とんでもないお宝が混じっていたら……という期待の炎がチラチラと燃える。ああ! これってまさに『なんでも鑑定団』に出演した人たちの気持ちだろう。
鑑定結果はいかに?!
まず、黒っぽい石のなかに明らかに違う種類の石がめり込んでいるもの。
「これ、蛇紋岩かもしれないですよ」
ええ! ヒスイを積んで地上に運んでくるトラック野郎の蛇紋岩! 小河原さんの話を聞いた後だから、妙に嬉しい。
サメとか大きな魚の歯かな? と思っていた豆粒のような2つは、まるで違った。
「これは多分、チャートというプランクトンの化石ですよ。今から約三億年前の海のなかにいた放散虫という小さいプランクトンが死んで海の底に積もって石になると、こんな感じになるんです。糸魚川ってこういう化石もいっぱい出てくるんですよ」
たまたま拾った石ころが3億年前の化石!? そんなことある!? と思うけど、それがアルアルなのが糸魚川なのだ。
もうひとつは?
「質感はヒスイに近いですよ、これ。でも多分ヒスイじゃない。きっと変斑れい岩(へんはんれいがん)ですね。地球を覆っているプレートを作ってる石です」
むむ!? プレートって地震とかヒスイができるきっかけになるプレートのこと!? そんなものがここに!?
それぞれの希少性は、まったくわからない。でも、僕にとって「なんかちょっと気になる」程度だった石ころの名前や特徴がわかると、それまで石ころに抱いたことのない妙なありがたみと親近感がわいてきた。蛇紋岩と3億年前の化石と地球のプレートを拾ったと思うと、ヒスイじゃないから捨てようという気持ちにはならず、家に持ち帰ることにした。
でもやっぱり、お宝も欲しい! ラピスラズリは分析が必要とのことだから、ヒスイだけでも見つけてみたい。コツを教えてください!
「乾いた時の表面の滑らかさです。波で磨かれると、マニキュアやロウを塗ったような独特のテカリが出てくるんですよ。乾いた状態でそのテカリがあるかどうかですね」