未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
311

石川県鹿島郡

1300年前、奈良時代の僧、泰澄大師が開いたと伝わる能登半島の不動滝。能登の実家に帰省するたびに、一度は行ってみたいと思っていた滝だ。毎年7月5日に行われる滝開きの法要を目指し、私は見物のつもりで中能登町へと向かった。地元の人たちが大切に守ってきたというこの滝には、もうひとつ、意外な顔があった――。

文= きえフェルナンデス
写真= きえフェルナンデス
未知の細道 No.311 |25 August 2026
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
石川県鹿島郡

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#1滝開きの朝

滝行、というものに、私はずっと憧れだけを抱いていた。あの白装束、あの気合いの入った真言、あの「悟りをひらいた顔」。テレビで見るたび、いいなあ、と呑気に思う。自分がやるとは、露ほども考えていない。

だから、石川県中能登町の不動滝で毎年7月5日に「滝開き」があると聞いたときも、最初は見物のつもりだった。滝壺で開かれる法要に参加した白装束の人たちが次々と滝に打たれる。その様子を写真に撮りつつ、茶でもすすって眺めていよう。優雅な計画である。

  • 不動滝がある、石川県中能登町井田。
  • 不動滝までは、登り坂を上っていく。

この日、金沢と能登半島を結ぶ国道159号線を車で走らせ、たどり着いたのは、田んぼの緑がどこまでも続く山あいだった。駐車場から登り坂を100メートルほど進むと川のせせらぎとともに、森を切り抜いたような空間があらわれる。ここは石川県中能登町井田、石動山の麓。

中能登町指定文化財の不動滝。

「かんじーざいぼーさーぎょじんはんにゃーはーらーみーたー」

現地に着くと、すでに読経が響き渡っていた。お堂の先には高さ20メートルに及ぶ滝が見える。参加者たちが白装束を身にまとい、法要の始まりを待っていた。その光景すべてが神聖な雰囲気を醸し出している。

10時から行われる法要に合わせ、早めに現地に到着していた。今回、案内してくれたのは不動滝を護る会の事務局を務める、長谷行祥(ぎょうしょう)さん。夫婦で不動滝のお世話係をしているのだという。

不動滝を護る会の方々と滝行の案内係を務める長谷行祥さん(中央)。

待っている間、白装束を身につけ近くに座っていた男性に声をかけた。地元・井田出身、30歳の福多さんは今回が初参加。何度も参加している高柳さんに連れられて来たそうだ。2人は法要の最後に、伝統的な郷土芸能「天平太鼓」を演奏するのだという。

周りにいた地元の人たちも、ここぞとばかりに法要の説明をしてくれる。中能登町の人の良さが感じられた。

参加者が続々と集まってくる。銅鑼が鳴り響き、法要が始まった――。

読経とともに祈りを捧げる、白装束の参加者たち。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。