
埼玉県春日部市
中央アジアを横断し、古代中国と西洋を結んだシルクロード。絹や金、羊毛などさまざまな物が行き交う交易路で、文化の発展に重要な役割を担っていた。そんなシルクロードが通る中央アジアには「ノン」と呼ばれるパンがある。日本でも焼きたてのノンが食べられる。見つけたベーカリーは、埼玉県春日部にあった。
最寄りのICから【E4】東北自動車道「岩槻IC」を下車
最寄りのICから【E4】東北自動車道「岩槻IC」を下車
今、中央アジアが「アツい」。
19世紀の中央アジアを舞台にした漫画『乙嫁語り』は、2014年マンガ大賞を受賞。2019年6月に公開された前田敦子さん主演の映画『旅の終わり世界のはじまり』は、全編ウズベキスタン共和国を舞台にした映画だ。さらに2018年2月から、ウズベキスタンへの30日以内の滞在には日本からビザを取得する必要がなくなり、ますます訪れやすい場所となった。
一部の人たちからは「中央アジアブーム」と呼ばれるほど、一昔前に比べて、その存在を意識する人が増えている。そして、私もそのひとりだ。
今まで意識することがなかった中央アジアを知りたくなったのは、前述の漫画『乙嫁語り』がきっかけだった。正月のある日、叔父から「これ、おもしろいぞ」と勧められ、あっという間に中央アジアの生活や手仕事に魅了されてしまったのだ。
彼らの生活を知っていく上で、私が興味をそそられたのが「ノン」である。
ノンとは、中央アジアの人々が主食として食べる、丸くて大きなパンのこと。表面のきれいな模様が特徴で、お店や作る人によって模様が違うのだそう。漫画のなかでも女性たちがノンを手作りする姿が描かれており、もっちりと美味しそうに描かれる焼きたてのノンを見て、何度唾を飲んだことか……。
「ノンが食べてみたいなあ」
『乙嫁語り』を読んだ多くの人が、きっとそう思うだろう。私もすぐに、日本でノンが食べられる場所を探し始めた。世界中の食が集まる東京であれば、どこかで食べられるのではないか。
そうして見つけ出した場所は……、埼玉県の春日部市?
思わぬ場所にあったのは、中央アジアのパンを扱うSilkroad Bakery SHER(シルクロード ベーカリー シェル)。キルギス共和国出身のウズベク人、サトゥバルディエフ・シェルゾッドさんと奥さんの香織さんが営む、中央アジア専門のパン屋だ。
「本場のノン」が食べられるこの店には、なんとキルギス共和国を始め、中央アジア各国の在日大使館からも注文が入る。日本にいる中央アジア人で知らない人はいない、というのだ。
埼玉で食べられる本格的なノンは、一体どんな味なのだろう。