犬たちとの交流タイムを終えた後は、校舎の裏に立つゲル(手作りの移動式住居)でランチタイム。この日のメニューは、シカ肉のミートソースで、村林さんのお手製だった。これがまた芳醇なシカ肉のうま味が口の中に広がる絶品で、あっという間に食べ終わる。この時間に、話を聞くことができた。
―犬ぞりの話を聞く前に、もともと北海道になにか縁があったんですか?
村林さん 縁もゆかりもありません(笑)。大阪出身で大学は東京の法政大学に通っていました。学生時代から、サラリーマンじゃない生き方をしたかったんですよね。それで、何かしら技術を持とうと思ったときに、木工技術なら身につけても損はないだろうと考えて、大学を卒業した後、長野で木工を学びました。その時に、椅子とかテーブルを作るノリで、形の面白さに惹かれてカヌーを作ったんです、乗ったこともないのに。
それが楽しくてね。川下りができるような広い土地で、カヌー作りをしていきたいと思って、勢いだけで34年前(1987年)、23歳で北海道の南富良野町に移り住んだんですよ。その後、北海道庁の研修制度を利用して、3カ月間、アメリカとカナダでカヌーとカヤックの作り方や文化を学びました。今でも、夏場はここでカヌーやカヤックを作っています。


―カヌーがきっかけだんですね! それがどういうきっかけで犬ぞりに?
村林さん 30年ぐらい前に、ハスキー犬のブームがあったんですよ。それで、北海道ではハスキー犬といえば犬ぞりだろうということで、犬ぞりも人気になりました。でも、当時はみんな輸入品のそりを使っていたから、ブームになったらそりが足りなくなったんですよ。その時、僕はカヌーを作って商売していたんですけど、「国産でそりを作ったらすぐ売れるよ」と言われて、じゃあやりますって(笑)。
―そりを作るほうから始まったんですね。
村林さん はい。その時に、カヌーは乗ったこともないのに作ったから、犬ぞりは作る前に一度本物を見ておこうと思って、1989年に3週間ほどアラスカに滞在して、現地のイヌイットの手伝いをしながら、そりの作り方を教わりました。それがまた楽しくて、「どうせだったら自分もやれるほうが面白い」と思うようになって、4年連続でアラスカに行って、犬の扱い方や操縦の仕方も勉強しました。