北海道紋別郡遠軽町
ちょっとしたきっかけで、以前から犬ぞりに乗ってみたいと思っていた。できることならお遊び程度ではなく、本格的に。でも日本じゃ難しいだろうと思い込んでいたら、ある時、ひとり一台のそりで往復16キロを走るプログラムがあると知った。居ても立っても居られなくなり、その舞台となる北海道の白滝に向かった。
最寄りのICから【E5】道央自動車道「旭川北IC」を下車
最寄りのICから【E5】道央自動車道「旭川北IC」を下車
「ハイク!」
なんだかあまりやる気なさそうにたたずむ4頭の犬の耳にしっかり届くことを意識して、腹の底から声を出した。すると、目覚まし時計に叩き起こされたかのように、犬たちが一気に走りだし、同時にそりがグググッと進み始めた。急な動きで、一瞬、のけぞる。振り落とされないように、そりの上に乗せた足を踏ん張り、一息ついて前を向いた。
力強く駆ける犬たちに引っ張れて、雪原をグングンと滑るそり。視野にはひたすら大きな北海道の空が広がり、聞こえてくるのは犬たちの息遣いだけ。雪交じりの凍てついた風に吹かれながら、僕は思わず叫んだ。
「やばいー! 気持ちいいー!」
前に2頭、後ろに2頭いる犬のうち、後ろ側の左に位置するバルトが後ろを振り向き、「この人間、なにいってんだ?」と不思議そうな顔をした。僕はもう一度、声をかけた。
「OK、レッツゴー!」
片道8キロ、往復16キロの雪中そり旅が始まった。