アイディアが浮かぶと、実現せずにいられないのがとし江さんの性格らしい。すぐに駅から遠くない場所に広い平屋の物件を見つけてきた。「元々は焼肉屋だった場所で、周囲に隣接する民家がなかったのが魅力的だった」という。
それを知った猪狩さんも、実現のために西へ東へと奔走した。障害者の自立支援に関わるNPOや、引きこもりの子どもたちの支援団体、IT系企業などに声をかけ、元焼肉屋のその建物を、医療や福祉の複合施設「あらたな ALATANA」としてまとめあげたのだ。
建物やスペースをシェアすることで、「いつだれ」だけで家賃を背負う必要がなくなった。また同時に「いつだれ」には、入居する団体や通ってくる人々を軽やかに「食」でつなぐという役割も期待された。
そして、実際に始まると、たくさんの食材が「いつだれ」に持ち込まれた。野菜だけではなく、取れすぎた魚やコメ、焼き色がイマイチなカマボコ、いただきもののお菓子などなど。そして、たくさんのボランティアの人たちも。
「自分でもよくわからないけれど、なにか大きいものに、やりな! やっていいよ!って言われているように感じました」(とし江さん)