古書店経営には、昔からこんなジンクスがあるという。
“歴史ある国立大学がある街では、古本屋がやっていける”というものだ。
「東北大学がある仙台もそう。歴史ある国立大学がある街には、それを取り巻くように私立大学もたくさんできるし、学生も多いし、専門家たちもたくさんいる。実際、古本屋をやってみたら本当にそうなんですよ」
大学の学生や先生たちが資料を探しにやってくる。それは仙台に住む専門家ばかりだけではない。仙台で学会があると、県外の研究者たちが寄ってくれる。
「ありがたいことに、常連客の専門家たちが『仙台にきたら、この古本屋に行ってみたらいいよ』と、県外の大学の先生たちに言ってくれるんですよ」
また仙台の大学の先生たちが定年退職を迎えるときに、研究室の整理をすることもある。こうして、店には良質な本や資料が集まってくる。「やっぱりインテリがいて、大学があって、勉強する若者がいると古本屋は回るんです」と土方さんは実感を込めて語る。
また学生は日本人だけではない。仙台へウクライナや中国から勉強に来ている留学生たちは、古本だけでなく、お土産になるような浮世絵などを「気合を入れて探しにくる!」という。
海外からも含めて旅行客もよく立ち寄るという。最近ではこんなこともあった。
旅行中のドイツ人の親子が、日本映画の大ファンで映画のパフレットを探している、という。ここにはないけれど、近くに倉庫があって、そこになら在庫があると伝えところ、「仙台にいられるのは今日しかないから見せてくれ!」と頼まれ、連れて行ったという。二冊ほど購入して帰っていたそうで、「あれは面白かったなー!」と土方さん。
「仙台駅から近いということで、ありがたいことに、旅行先で古本屋巡りを楽しむ人たちにとっては、「仙台にきたらあらえみし」っていうルートができているみたいですねえ」