今、仙台では古本市がとても盛んで、多くの古本市があるという。しかも取材したこの日、仙台駅駅ビルのなかでやっているというので、土方さんに連れていってもらうことにした。新刊書店の丸善と「古本あらえみし」をはじめ市内の古本屋がコラボするという大変珍しいブックマーケットである。その名も「丸善仙台アエル店バーゲンブック古本市」。もちろん、土方さんと市内の仲間たちが一緒に企画して立ち上げたものだ。
仙台駅まで歩きながら土方さんと話しを続けた。今は古本市がこうして盛んな仙台だけど、少し前までは、街の古本屋が減っていき、古本市もひとつしかなかったという。
土方さんが大学生だった時、仙台には古書店や古本市がたくさんあった。それを復活したいと思い、2019年に古本あらえみをオープンしてからは、市内の古書店だけでなく新刊書店とも手を組んで、さまざまな古本市を立ち上げてきた。
「古本あらえみし」から10分ほどで、古本市にたどり着いた。人が行き交う仙台駅に隣接する商業ビルのなかで、きれいに整えられた古本市にはたくさんの人が立ち止まり、熱心に古本を見ていた。この街の人ばかりでなく、きっと遠くから旅行や仕事で仙台に来て、ここに立ち寄った人もいるだろう。とても活気のある古本市だった。
古本あらえみしのブースにもさまざまな本があった。古本市ではどのようなポイントで本を並べているのか、聞いてみた。「今回は戦後80年ということもあり、さりげなく関連書籍をたくさんいれていますね」と土方さん。
お客さんの一人に声をかけ、『古本あらえみし』の魅力を聞いてみた。するとその男性は「この本屋は、絶対立ち寄ったほうがいい、そういう店なんです。自分は、県外から友達がきたら、とにかく仙台にすごい面白い場所があるから、と言って連れていくんですよ」と答えてくれた。
私も取材を中断し、しばしいろいろな本を眺める。そうすると、立ち寄るお客さんたちがどんどん土方さんに声をかけていく。メガネをかけた仕事帰り風の男性、ラフな格好をしたおじさん。本屋も開き、出版社の社長であり、地元の新聞社での連載をはじめたくさんの媒体にエッセイを書いている土方さんのことだもの、きっと親しい常連さんや仕事仲間が多いのだろう。手を忙しく動かして本を並べながら、土方さんは一人一人と丁寧に話していく。また一人の女性が、「久しぶりです!」と土方さんの肩を叩いた。こうして本はまた、誰かのところへと循環していくのだな、と思った。