ちなみに「古本あらえみし」は、私にとっては「写真集」と「東北の本」の店だけれど、常連客にとっては「SF文学」「幻想文学」の店でもある。
「自分の趣味はミステリーやSF、幻想文学系なので、自然とたくさんそろっている。でも松本さんみたいに『写真集の本屋さん』と思ってもらってもいいんです。むしろ間口は広い方がいい。得意ジャンルが多い方がいいですから。ミステリーやSFが好きな人にとってはマニアックな本がそろっているし、写真集に関してもそう。自分の好みや仕事の延長からできあがったラインナップなんです」と土方さんはいう。
そうしたジャンルを目当てに、店に来るのは例えば仙台の大学の「SF研究会」の学生たちだ。
SF小説が大好きな彼らは、学生であっても、時に高価な本を買っていく。「この本が東京の古本屋に置いてあることはわかってます。だから電車代分を考えれば安いんですよ!」などといって買っていく学生もいるそうだ。なんだか面白い理屈だけれど、古本の魔力みたいなものが伝わってくるエピソードだ。
彼らは常連客でもあるが、イベントなどの力仕事を手伝ってくれる臨時アルバイトになってくれることもあるという。彼らが卒業して、仙台を離れるときには「土方さん、僕らがいなくなったら力仕事が困るでしょ」といって後輩たちをつれてくる。そうしてまた新しい若者たちが途切れずに店に通ってくれるのだそうだ。
そうそう、そして忘れてはいけない。「あらえみし」は古本屋だけど、『被災学』や『仙台文学賞』など、出版社「荒蝦夷」が手がける新刊本も、レジ脇にたくさん置いてある!