未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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小柄でも大男を倒せる忍術とは? 戸隠で見つけた「生き延びる」ための知恵

文= 柳澤聖子
写真= 柳澤聖子
未知の細道 No.290 |10 October 2025
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#3忍者の本当の姿

戸隠神社奥社入口にある「戸隠流忍法資料館」。同じ敷地内には「戸隠民俗館」「忍者からくり屋敷」も。

門をくぐり、奥へ進むと目当ての「戸隠流忍法資料館」があった。 ここには初見氏が寄贈した忍具約500点と、本物の忍者の動きを撮影した写真パネル約200点が飾られる。

戸隠流忍術の道具が多数納められた、「戸隠流忍法資料館」。隣村の鬼無里村の住宅を移築して作られた。

忍者とは一体どんな存在だったのか。館長の山本幸彦さんに聞いてみた。

「昔はあちこちで合戦がありました。力のある領主たちは、忍者を給料で雇っていたんです。合戦では敵の弱点を知ることが勝敗を分けました。そのため、町で変装して情報を探る人、夜に忍び込む人など、役割ごとに忍者を使い分けたんですね。とはいえ合戦が常にあるわけではないので、普段は農業や林業、商人など、さまざまな仕事をして生活していたようです」

忍術に使う武器が農具や日用品に転用できるのも、その生活背景があったからだ。

資料館には、当時使われていた本物の忍具や写真がずらりと並ぶ。ここで私にも「忍者は本当にいたんだな」という実感が湧いてきた。

やはり忍者といえば、「手裏剣」や「鎖鎌(くさりがま)」を思い浮かべる人も多いだろう。

戸隠流独自の手裏剣に「センバン」がある。敵に向かって投げるだけでなく、とがった部分を使ってものを削ったり、中央の穴を利用して釘を抜いたりしたと考えられている。

中央にある四角形に近い形の手裏剣が、戸隠流独自に伝わる「センバン」手裏剣だ。

農作業に使う鎌に鎖と分銅をつけた「鎖鎌」は忍具として有名だが、戸隠流独自のものに「キョケツショウゲ(距趹渉毛)」がある。変わった名前だが「山谷を駆け巡る」という意味があるらしい。
特徴は、鎌の刃のように曲がった部分に加え、直線的な刃がついているところだ。その部分で敵の刀を受け止めたり、分銅で相手を打ったりしたという。

中央にあるのが、戸隠流忍術独自の鎖鎌「キョケツショウゲ(距趹渉毛)」

忍者になれるのは、特別な素質を持つ者だけだった。運動神経に長けていて、情報収集が得意な者が「忍びに向いている」と見込まれる。頼まれると、断ることはできなかったという。普段は農民として暮らしている人が大半で、家族にも内緒で忍びの役目を担ったそう。

「戸隠流忍術は、気づかれずに安全に情報を持ち帰ることが目的です。万一見つかっても、逃げ延びて生きて帰ることが最優先。そのために、さまざまな忍具が日常的な道具から考えだされたんです」

館長の山本幸彦さん
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