忍者は本当にいたのだろうか?
私の出発点は、まずここからだった。
「戸隠流忍術」は、約800年の歴史があると伝えられている。
調べてみたところ、その起こりは平家と源氏の戦いで活躍した木曽義仲の家臣・仁科大助までさかのぼる。仁科大助は、戸隠の地で修験道の修行を重ね、独自の技を身につけた。
やがて主君の義仲が討たれると伊賀へ逃れ、伊賀流忍術を学んだうえで自らの技を融合させ、「戸隠流忍術」を完成させたとされる。仁科大助は「戸隠大助」とも呼ばれ、戸隠流忍術の初代となった。
その後、流派は脈々と受け継がれ、34代宗家を継いだのが初見良昭氏だ。幼少期から空手・柔道・合気道などを修め、さらに複数の忍術流派を学んだ初見氏は、それらを統合して「武神館(ぶじんかん)」を創設。世界に門戸を開き、現在では世界中に40万人以上の弟子を持つといわれる。
米連邦捜査局(FBI)や英国特殊部隊(SAS)から感謝状を受けるなど、実戦的な武術として国際的な評価も高い。『TIME』誌が選ぶ「世界が尊敬する日本人100人」に掲載されたこともある。
2019年には、特撮ドラマ『世界忍者戦ジライヤ』(1988年放送)で主演を務めた俳優・筒井巧氏が、初見氏から35代宗家を継いだことが大きな話題となった。その後、初見氏は第一線を離れ、現在は健在ながらも道場に姿を見せることはなくなっているという。
私は、かつての忍者の足跡をたどるべく、忍者が使ったという忍具が所蔵される「戸隠流忍法資料館」を訪ねてみることにした。