同じ敷地内には「忍者からくり屋敷」がある。
「忍者からくり屋敷」は、侵入者を防ぐための仕掛けがある忍者屋敷を再現した施設だ。戸隠の「忍者からくり屋敷」は、大人でも一度入ると1時間は出てこられないと言われるほど巧妙な仕掛けが大人気なのだ。
館内は原則撮影禁止だが、館長の山本さんのご厚意で、特別に一部だけ撮影ができることになった。
私は巨大迷路などが苦手でパニックになってしまう。「ひとりで行ったら脱出できないかも」と心配になり、家族4人で参加することにした。
緊張しながら部屋に入ると、いくつもの扉があり、階段を上がろうとすると突然外れる「落とし階段」に遭遇。次の部屋に進むには、必ず、からくりを解き、次に進める扉を見つけなくてはいけない。
ようやく進んでも、部屋はどれも似たようなつくりで、もとの場所に戻る扉さえわからなくなり、方向感覚を失ってしまう。かつての忍者屋敷で、脱出できなくなり捕らえられた侵入者がいたのも納得だ。
一方、息子たちは扉を次々に開け、からくりを見つけては先に進んでしまう。自由に行かせたら、館の中で迷子になるのでは? と不安になり、「ちょ、ちょっと待って!」と必死に追いかけた。
途中には思わぬ仕掛けや、掛け軸に隠されたヒントもあって謎解きのようで楽しい。自然とその場にいる参加者同士で協力し合うようになり、不思議な一体感が生まれた。
息子たちの助けで、私たちは40分ほどで屋敷を脱出できた。訪れたのは夏休み。実は来館者が多くなる時期は混雑をさけるために難易度を下げた“簡単バージョン”にするという。
「からくり館の仕掛けは3カ月に一度は変えています。リピーターの方に楽しんでもらうためですね。冬季は閉館するので、その間に大工さんに頼んで大がかりな改修もします」
と山本さん。
確かに「一度来たことがあるのに解けなかった!」と話す親子がいたが、そういうことだったのか!
「大きな設計図はありますが、どこにどんなからくりがあるかの図はないんです。全部頭の中に入っているので、『あそこを変えようか』と夜、仕掛けを変える。翌朝、スタッフが掃除に入って『あれ? この扉開かないぞ』と驚くくらい、気軽に変えているんですよ」
他にも、敷地内には戸隠の昔の暮らしの道具が所蔵される「戸隠民俗館」や手裏剣を投げられる「手裏剣道場」、戸隠山を望む「吊り橋」などがある。
手裏剣道場では、山本さんから投げ方を教わった。忍者は狭い場所に忍び込み、敵に気づかれずに投げる必要があるため、腕を大きく振らず、手首のスナップだけで放つのがコツだという。実際の手裏剣の練習では、畳を的にして、投げた手裏剣を刺す練習を行う。ここでは、人形の的にあてる練習だ。思ったよりも難しく、まったく的に当たらなかったが、山本さんは、ほぼ百発百中だった。